ペキニーズを調べたとき、国際畜犬連盟(FCI)の分類で「狆とペキニーズ」という小さなグループに入っているのを知って、気になっていました。調べてみると、狆の祖先は732年に朝鮮半島から日本の朝廷に贈られたと考えられていて、江戸城で飼われ、ペリー提督がアメリカへ連れ帰った犬でもありました。
この記事では、ジャパンケネルクラブ(JKC)とFCIの犬種標準、獣医師監修の解説をたどりながら、歴史・毛色・性格・お手入れ・かかりやすい病気・迎え方までをまとめました。
ハル
日本に来たのは、なんと1300年くらい前なんだって。
あんず
どんなおうちで暮らしてたのか知りたいもん!
レオ
ペキニーズと同じグループに分類されているんだって。
タル吉
長い旅をしてきた者は、たいてい物静かなものじゃ。
ハル
ペキニーズとの違いも、並べて比べてみたよ。
狆ってどんな犬?1300年近く日本で愛されてきた小型犬
JKCとFCIの犬種標準に書かれた狆の歴史は、とても長いものでした。
- 732年:朝鮮半島の新羅から日本の朝廷に贈られた犬が、狆の祖先と考えられている
- その後約100年:たくさんの狆が渡来。唐や渤海に送られた使者が直接持ち帰ったという記録も
- 徳川綱吉の時代(1680〜1709年):江戸城で室内の愛玩犬として飼われた
- 1613年:イギリス人のキャプテン・サーリスが英国へ持ち帰った
- 1853年:ペリー提督がアメリカへ数頭を持ち帰り、そのうち2頭がビクトリア女王に献上された
- 1868年以降:上流社会の婦人たちの抱き犬として愛され、今は家庭の愛玩犬として広く飼われている
ペキニーズの記事でも、ビクトリア女王が愛育したと書きました。遠く離れた日本と中国の小型犬が、同じ女王のもとにいたと思うと不思議な気持ちになります。
JKCの2025年の犬籍登録頭数では、狆は386頭で第35位でした。これまで調べてきた犬種の中では、いちばん数が少ない犬種です。
狆の毛色と姿|白地に黒か赤、左右対称の模様

鼻すじから頭のてっぺんへ通る白い筋が、狆らしさです。
FCIの犬種標準で認められている毛色は、白地に黒、または白地に赤の模様です。模様は、目のまわりから耳にかけて左右対称に入り、全身にもバランスよく散らばっているのが望ましいとされていました。とくに、鼻すじから頭のてっぺんまで通る、白く太い筋(ブレーズ)が望ましいそうです。
反対に、模様のない真っ白な毛や、顔に模様がひとつしかないものは欠点、3色(トライカラー)は失格とされていました。
姿については、「顔が広く、豊かな毛に覆われた、上品で優雅な小型犬」。耳は長い毛に覆われた三角形の垂れ耳で、しっぽは背中の上に乗せ、美しい長い飾り毛があります。前脚は骨が細く、歩き方は「優雅で、軽やかで、誇らしげ」と書かれていました。鼻すじは短く広いものの、鼻の穴はよく開いていること、目は大きいけれど誇張されていないことも求められています。
狆とペキニーズの違い|同じグループでもこんなに違う

高さは近くても、体つきはまるで違います。
FCIの分類では、狆とペキニーズは同じ「狆とペキニーズ」というグループです。どちらも鼻が短く、長い毛の小型犬ですが、犬種標準を並べてみると、目指している姿はずいぶん違いました。
「抱き上げると驚くほど重い」ペキニーズに対して、狆は細い骨で軽やかに歩く犬。見分けるなら、狆は白地にくっきりした模様、ペキニーズは首のたてがみが目印になりそうです。ペキニーズのことはペキニーズの性格と飼いやすさは?にまとめています。
狆の性格|利口で穏やか、でもちょっと繊細
FCIの犬種標準には、性格が「利口で、穏やかで、愛らしい」と書かれています。
アイペット損保の鷺島祥子獣医師が監修した解説では、狆はとても利口で大人しく、愛らしい性格で、人のそばにいることを好む一方、ややプライドが高く気の強い一面もあり、乱暴な扱いは苦手とされていました。
葛野宗獣医師が執筆・監修した解説(withpety)では、物静かで落ち着いているため、室内でも飼いやすい犬種とされていました。愛情深く友好的な反面、繊細な一面もあり、分離不安になる子もいるそうです。
「大人しくて、でもプライドがある」。江戸城で大切にされてきた歴史を思うと、なんだか納得してしまいます。性格には個体差があるので、あくまで一般にそう言われている、というお話です。
狆のお世話|飾り毛の毛玉・暑さ・床の滑り
飾り毛は毛玉になりやすい
鷺島獣医師監修の解説では、毛を保つために定期的にブラッシングし、とくに飾り毛の部分は毛玉になりやすいので丁寧にとかすことがすすめられていました。葛野獣医師の解説でも、毛玉やもつれは動きにくさや皮膚トラブルの原因になるので、こまめに手入れする習慣をつけるよう書かれています。
耳・首・太もも・しっぽに豊かな飾り毛がある犬種なので、シャンプーのあとは根元までしっかり乾かしたいところです。
短いマズルと豊かな毛で、暑さに注意
葛野獣医師の解説では、狆はマズルが短く被毛が豊富なため、熱中症に注意が必要とされていました。わが家のあんずも鼻の短い犬種で、気温が25度を超えた日の長い散歩でぐったりしたことがあります。夏の散歩は朝晩の涼しい時間にしたいです。
フローリングで滑らないように
小型犬に多い膝のトラブル(下で詳しく書きます)を考えると、滑りやすい床への対策も大切です。わが家では、あんずとレオのためにフローリングにマットを敷いています。
🐾 床の滑りに「足裏シール」、長い毛を乾かす「ドライヤースタンド」
フローリングでの滑りを減らす足裏シールと、両手でブラッシングしながら乾かせるスタンドの一例です(わが家の使用品の紹介ではありません)。歩き方がおかしいときは、滑り止めで様子を見ずに動物病院へ。
ブラッシングやシャンプーの目安はあくまで一般的なものです。皮膚に赤みやかゆみがあるときは、自己判断せず動物病院に相談してください。
狆がかかりやすい病気|膝・首・目・頭
鷺島獣医師と葛野獣医師の解説で、狆に多いとして挙げられていた病気を、家庭で気づけるサインと一緒にまとめました。
膝のトラブルは「後ろ足の動き」で気づく
葛野獣医師の解説では、膝蓋骨脱臼のサインとして後ろ足を上げる、触ると嫌がる、後ろ足を引きずって歩くが挙げられていました。骨の細い小型犬なので、ソファからの飛び降りや滑りやすい床には気をつけたいところです。
大きな目は、毎日見てあげる
鷺島獣医師の解説では、ドライアイや白内障が挙げられていました。狆は目が大きく、顔の毛で隠れにくい犬種です。目ヤニが急に増えた、目が白っぽく見えるときは、早めに受診したいです。
ここに挙げたのはあくまで気づくためのきっかけで、診断ではありません。あてはまるところがあっても自己判断はせず、気になる様子があれば動物病院に相談してください。
狆を迎えるときに知っておきたいこと
出会える機会は多くない
JKCの2025年の登録頭数は386頭。トイプードルの約6万6千頭と比べると、ずっと少ない数です。ペットショップで見かけることは少ないと思うので、迎えたい場合は時間をかけてブリーダーさんを探すことになりそうです。
「8週齢」のルール
環境省が定める動物愛護管理法では、繁殖業者が生まれてから56日(8週齢)を過ぎない子犬を、販売のために引き渡したり展示したりすることは禁止されています(令和3年6月1日施行)。
迎え方の3つの道
子犬の価格は、信頼できる形で「いくら」と書ける情報が見つかりませんでした。検討される際はご自身で最新の情報を確認してください。
同じ鼻の短い長毛の犬種はシーズーの性格と飼いやすさは?で、小型犬の膝のことはトイプードルの性格と飼いやすさは?で調べています。
狆についてよくある質問
「狆」はなんと読む?
「ちん」と読みます。JKCの犬種名も「狆」です。
寿命はどのくらい?
これまでの犬種記事で使ってきたアニコム損保の犬種別の平均寿命の表には、狆が載っていませんでした。信頼できる形で数字を書ける情報が見つからなかったので、ここでは書かないことにします。
ペキニーズとの見分け方は?
狆は白地に黒か赤のくっきりした模様で、脚が細く軽やか。ペキニーズは首にたてがみがあり、骨太でずっしりしています。
日本の犬なの?
JKCでは、狆の原産国は日本とされています。祖先は8世紀に朝鮮半島から渡ってきたと考えられていますが、その後、日本で長く大切にされてきた犬です。
あんず
あんずもいつか、軽やか〜に歩いてみたいの!
ハル
これで16犬種目。1300年の歴史、調べがいがあったなあ。

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