国際畜犬連盟(FCI)の犬種標準を開くと、パグはラテン語で「multum in parvo(小さな体にたくさんのものが詰まっている)」と紹介されていました。そして、2023年に公表された今の標準には、「鼻の穴は十分に開いていること」「鼻の上の深いしわは受け入れられない」と、呼吸を守るための言葉がはっきり書かれていました。
この記事では、FCIの犬種標準、ジャパンケネルクラブ(JKC)の登録数、大学や動物病院の解説をたどりながら、歴史・毛色・性格・暑さとしわのケア・かかりやすい病気・迎え方までをまとめました。同じ短頭種のシーズー、あんずと暮らしている立場からの実感もまじえています。
ハル
犬種標準に「小さな体にたくさん詰まってる」って書いてあるんだって。
あんず
じゃあ、夏はあんずみたいにぐったりしちゃうの?
レオ
だから今の犬種標準には、鼻の穴がちゃんと開いていることって書いてあるんだって。
タル吉
当たり前のことを書き直すのも、大事な仕事じゃのう。
ハル
「パグ脳炎」っていう、名前に犬種が入った病気のことも調べたよ。
パグってどんな犬?中国生まれ、オランダ王家に愛された犬
FCIの犬種標準では、原産国は中国、犬種の保護・管理を担う国はイギリスとされています。起源にはいろいろな説があるものの、東洋から来た犬と考えられていて、中国では昔から鼻の低い犬が好まれてきたそうです。
ヨーロッパへは、オランダ東インド会社の商人によって運ばれ、1500年代にはすでにオランダで愛されていました。標準には、パグが王家を支持する人々のシンボルになったとも書かれています。イギリスへはウィリアム3世の即位とともに渡り、1877年までは淡い黄褐色(フォーン)のパグしかいませんでしたが、この年に東洋から黒いパグのペアが持ち込まれたそうです。
体高の決まりはなく、体重の理想が6.3〜8.1kg。「短足でも脚長でもない、四角くて筋肉の締まった体」が求められています。あわせて標準には、「がっしりした体つきと肥満を混同してはならない。肥満は非常に望ましくない」とも書かれていました。
JKCの2025年の犬籍登録頭数では、パグは4,928頭で第12位でした。
パグの毛色と顔|今の犬種標準は「呼吸」を重く見る

黒以外の3色は、顔と耳の黒いお面がトレードマークです。
FCIの標準で認められている毛色は、シルバー・アプリコット・フォーン・ブラックの4色です。黒以外の毛色では、マズル(お面)、耳、頬のほくろ、額の模様、そして後頭部からしっぽまで背中に走る黒い線(トレース)ができるだけ黒く、地の色とくっきり分かれていることが求められていました。
鼻・目・しわについての言葉
2023年8月に公表された現在のFCIの標準には、顔について次のような記述がありました。
- 鼻は黒く、かなり大きく、よく開いた鼻の穴を持つこと
- 狭くつぶれた鼻の穴と、鼻の上の深いしわは受け入れられない(重く減点)
- マズルは短いが、上を向いてはいない。目や鼻が、鼻の上のしわでふさがれてはならない
- 目は大きく丸いが、決して飛び出していない。目のトラブルがないこと
さらに欠点の扱いについて、「その欠点が犬の健康と福祉に与える影響の大きさに応じて判断する」とありました。見た目の好みよりも、息ができること、目を守れることを重く見る書き方です。
フレンチブルドッグを調べたときも、2023年の標準改訂で呼吸の問題が重く扱われるようになっていました。短頭種の犬種標準は、今そういう流れの中にあるのだと思います。
パグの性格|魅力と威厳、そして陽気さ
FCIの犬種標準には、性格が「大きな魅力と威厳と知性。気分が安定していて、陽気で、生き生きとしている」と書かれています。
ヤマザキ動物看護大学の福山貴昭准教授が監修した解説(日本全薬工業「ハグわん」)では、パグは愛想がよく穏やかで社交的、攻撃的ではなく、遊びやいたずらが好きで、ほかの動物とも仲良くできる一方、頑固な一面もあるとされていました。
「威厳があるのに、いたずら好き」。シーズーの標準に「尊大な身のこなし」と書かれていたのを思い出して、あんずと少し似ているなと思いました。どちらも宮廷や王家に近いところで愛されてきた犬です。性格には個体差があるので、あくまで一般にそう言われている、というお話です。
パグのお世話|暑さ・顔のしわ・体重の3つ
暑さには、あんず以上に気をつけたい
パグは鼻の短い短頭種です。わが家のシーズーのあんずも短頭種で、気温が25度を超えた日に長い散歩をしたとき、直射日光の当たる道でぺたっと低い姿勢になって動かなくなったことがあります。それ以来、夏の散歩は朝晩の涼しい時間にして、10〜15分ごとに日陰で休ませています。
パグは短い毛でがっしりした体つきです。暑さ対策の考え方は、同じ短頭種のフレンチブルドッグの記事で調べた「夏の水遊びは不向き」という話もあわせて読んでみてください。
顔のしわは、毎日ふく
福山准教授監修の解説では、顔のしわの汚れをタオルやガーゼ、コットン、刺激のないウェットティッシュなどでやさしくふき取ることがすすめられていました。頻度はできれば毎日、少なくとも週に1回とのことです。あんずの目のまわりをふいているので、この手間はよく分かります。
体重は、ずっと気にかける
犬種標準にまで「肥満は非常に望ましくない」と書かれているのは、パグならではだと思います。見た目の「がっしり」と「太りすぎ」を取り違えないように、定期的に体重を量る習慣をつけたいところです。
🐾 体重管理の「ペット用体重計」と、しわをふく「コットンシート」
抱っこせずに量れる体重計と、顔のしわや目元をふくコットンの一例です(わが家の使用品の紹介ではありません)。しわの奥が赤い、においが強いときは動物病院へ。
標準にある理想体重6.3〜8.1kgはあくまで目安で、その子にとっての適正体重は骨格によって変わります。「うちの子の適正体重」は、かかりつけの先生に一度聞いておくと安心です。
パグがかかりやすい病気|パグ脳炎・呼吸・目・皮膚のしこり
大学や動物病院、獣医学の専門家が監修した解説で、パグに多いとして挙げられていた病気を、家庭で気づけるサインと一緒にまとめました。
名前に犬種が入った病気「パグ脳炎」
アニコム損保の「みんなのどうぶつ病気大百科」によると、正式には壊死性髄膜脳炎という病気で、最初に見つかった症例がパグで、その後もパグに多かったことから「パグ脳炎」と呼ばれているそうです。マルチーズやチワワ、シー・ズーなど、ほかの小型犬にも起こります。
東京大学の研究室の解説では、1〜3歳の若い犬に多いとされ、最初はけいれんや頭をぐるぐる回す動きから始まり、進むとふらつきや立てなくなるといった症状が出るとされていました。脳脊髄液から脳の組織に対する自己抗体が見つかったという国内の研究も紹介され、自己免疫が関わっていると考えられています。
はっきりした原因は分かっておらず、アニコム損保の解説でも予防することは難しいとされていました。そのぶん、初めてのけいれんや、ぐるぐる回るなどのいつもと違う動きに気づいたら、すぐに動物病院へ。とくに若いパグで起きたときは、この病気の名前を頭に置いておきたいです。
目は、大きいぶん傷つきやすい
埼玉動物医療センターの解説では、角膜潰瘍はパグやペキニーズなど目が大きく露出している犬種に多いとされ、早く治療すれば悪化を防げると書かれていました。あんずも短頭種で目が大きいので、目をしょぼしょぼさせる、白目が赤いときは様子を見ずに受診するようにしています。
皮膚の「しこり」は放っておかない
TPC浜松動物総合病院の症例紹介では、パグは皮膚の肥満細胞腫がとても多い犬種として知られているとされていました。肥満細胞腫は悪性の腫瘍ですが、見た目だけでは脂肪のかたまりや虫さされとの区別がつきにくいといわれます。同院の解説でも、しこりを見つけたら、ただ切り取るのではなく、腫瘍の性質を詳しく調べてから治療を始める必要があるとされていました。短い毛のパグは、なでているときに皮膚の変化に気づきやすいはずです。新しいしこりに気づいたら、小さくても受診したいところです。
巻いたしっぽと背骨の形
動物病院セカンドセレクトの解説では、フレンチ・ブルドッグやパグには、背骨の一部の形が生まれつき崩れた半側椎弓(半椎)が見られやすいとされていました。基本的には目に見える症状はなく、あるからといって必ず病気になるわけではないそうです。ただ、背骨が安定しにくいぶん椎間板が傷みやすく、ヘルニアにつながることがあるため、健康診断のついでにレントゲンを撮っておいても損はないとされていました。
ここに挙げたのはあくまで気づくためのきっかけで、診断ではありません。あてはまるところがあっても自己判断はせず、気になる様子があれば動物病院に相談してください。
パグを迎えるときに知っておきたいこと
親犬の「鼻の穴」と「呼吸」を見せてもらう
今の犬種標準が「よく開いた鼻の穴」を求めているように、パグでは呼吸のしやすさがとても大切です。ブリーダーさんから迎えるなら、親犬が静かにしているときの呼吸の音や、鼻の穴の形も見せてもらえると安心だと思います。
「8週齢」のルール
環境省が定める動物愛護管理法では、繁殖業者が生まれてから56日(8週齢)を過ぎない子犬を、販売のために引き渡したり展示したりすることは禁止されています(令和3年6月1日施行)。
迎え方の3つの道
子犬の価格は毛色や血統で幅がとても大きく、信頼できる形で「いくら」と書ける情報が見つかりませんでした。検討される際はご自身で最新の情報を確認してください。パグの場合は、夏のエアコン代と、呼吸や目の通院の可能性を見込んでおくほうが大事だと思います。
あんず・レオと比べて|同じ短頭種でもこんなに違う

高さはあまり変わらなくても、パグの体はずっしり四角いです。
パグとあんずは、どちらも鼻の短い短頭種。でも並べてみると、違いもたくさんあります。
トリミング代がかからないのはパグの大きな違いです。そのかわり、顔のしわのお手入れと体重管理が毎日の仕事になります。暑さと目に気をつけるところは、あんずとまったく同じでした。
あんずの犬種のことはシーズーの性格と飼いやすさは?に、レオの犬種のことはトイプードルの性格と飼いやすさは?にまとめています。
パグについてよくある質問
寿命はどのくらい?
アニコム損保の2021年度のデータ(家庭どうぶつ白書2023)では、パグの平均寿命は12.8歳でした。犬全体の平均(14.2歳)より短めです。
トリミングは必要?
毛は短くなめらかなので、全身のカットは必要ありません。そのかわり、顔のしわのふき取りが大切です。
体の大きさの決まりは?
FCIの犬種標準に体高の決まりはなく、体重の理想が6.3〜8.1kgとされています。ただし「がっしりした体と肥満を混同してはならない」とも書かれています。
パグ脳炎は予防できる?
はっきりした原因が分かっていないため、予防は難しいとされています。けいれんやいつもと違う動きに気づいたら、すぐに動物病院に相談してください。
あんず
お鼻が短い同士、いつか一緒に日陰で休みたいの!
ハル
これで14犬種目。次はパグの近くの犬種、ペキニーズのことも調べてみようかな。

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