国際畜犬連盟(FCI)の犬種標準を読んでみると、しっぽの項目にこんな一文がありました。「以前は、短く断尾するのが習慣だった」。いまの標準には、切らない長いしっぽの持ち方まで書かれています。「コーギーにはしっぽがない」というのは、生まれつきの話ではなかったようです。
この記事では、FCIの犬種標準、ジャパンケネルクラブ(JKC)の犬種紹介と登録数、獣医師監修の解説、岐阜大学動物病院の情報をたどりながら、歴史・しっぽ・性格・抜け毛・運動・かかりやすい病気・迎え方までをまとめました。
ハル
イギリスの女王さまが、ずっと一緒に暮らしていた犬なんだ。
あんず
でも、しっぽはどこにあるの?
レオ
しっぽは、昔は短く切るのが習慣だったんだって。
タル吉
足の長さで力は決まらんのじゃ。わしが言うのじゃから間違いないのう。
ハル
シニアになってからの足の病気のことも、大学病院の情報で調べたよ。
コーギーってどんな犬?牛を追っていた、王室の犬
JKCの犬種紹介によると、ウェルシュ・コーギー・ペンブロークは1107年までさかのぼれる古い犬種です。祖先は、フランドル地方の織工が連れてきた犬とも、スウェーデンの犬がもたらしたとも言われ、ウェールズのペンブロークシャー地方で主に飼われてきました。ヘンリー2世から現代の英国王室まで愛されてきた、とも書かれています。
アイペット損保の武藤弘恵獣医師が監修した解説では、体は小さくても大型犬並みの作業能力があり、牛を追ったり、イタチやキツネ、ネズミを追い払ったりと活躍したとされていました。アニコム損保の「犬との暮らし大百科」には、エリザベス2世が生涯で30頭以上のコーギーを飼っていたことも紹介されています。
体高は30cmまでと低いのに、体重は10kgを超えます。アニコム損保の解説では中型犬に分類されていました。小型犬のつもりで迎えると、抱っこの重さに驚きそうです。
JKCの2025年の犬籍登録頭数では、ウェルシュ・コーギー・ペンブロークは4,665頭で第13位。JKCの第1グループ(牧羊犬・牧畜犬)の犬を調べるのは、この犬種図鑑でははじめてです。
コーギーのしっぽ|「ない」のではなく、切っていた
FCIの犬種標準(第39号・2022年公表)のしっぽの項目は、3つの文でできていました。
- 以前は、短く断尾するのが習慣だった
- 断尾しない場合:背中の線の延長に付き、動いているときや注意を向けたときは、背中の線より上でも下でもよい
- 生まれつき短いしっぽ(ナチュラル・ボブテイル)の子もいる。その場合、長さはどんな長さでもよい
つまり、しっぽのあるコーギーも、標準の中にきちんと書かれています。アニコム損保の解説でも、ペンブロークは「しっぽがなかったり短いほうが理想とされていた名残から、断尾をすることが多い」と説明されていました。
ペンブロークとカーディガンは、別の犬種
コーギーには、もうひとつウェルシュ・コーギー・カーディガンという犬種があります。アニコム損保の解説によると、歴史はカーディガンのほうが古く、昔は同じ犬種として登録されていたこともあったそうですが、いまは別の犬種です。

日本で見かける「コーギー」は、ほとんどがペンブロークです。
日本で「コーギー」と呼ばれている犬は、登録数から見てもほとんどがペンブロークです。この記事でも、ここから先はペンブロークのお話です。
コーギーの性格|外向的で友好的、そして好奇心のかたまり
FCIの犬種標準には、性格が「見た目は大胆で、働き者。外向的で友好的。神経質でも攻撃的でもない」と書かれています。
武藤獣医師監修の解説でも、とにかく元気で、じゃれることが大好き。初めての人ともすぐ親しくなるとされていました。いっぽうで、少し頑固でわがままな一面もあるので、はじめて犬と暮らす方は、ブリーダーに気が強すぎない子を紹介してもらうとトレーニングがしやすいかもしれない、とのことです。
アニコム損保の解説には、もとが牧羊犬なので、きちんとしつけをしないと吠えや噛み癖につながることがあるとも書かれていました。子犬のころからの社会化としつけが大切だそうです。
足は短いのに、テーブルに届く
おもしろかったのが、アニコム損保の解説にあった注意です。コーギーは好奇心が強く、足が短いからと油断してテーブルに食べ物を置いておくと、食べられてしまうことがある。足は短くても胴が長いので、前足をかけて立ち上がると、思っている以上に高いところに届くのだそうです。

どの高さまで届くか、先に調べておきたいです。
武藤獣医師の解説でも、かかりやすいトラブルに異物誤飲が挙げられていました。口にしてほしくないものは戸棚にしまう、という基本が、この犬種ではとくに大事になりそうです。性格には個体差があるので、あくまで一般にそう言われている、というお話です。
コーギーのお世話|抜け毛・運動・体重の3つ
抜け毛はとても多い
アニコム損保の解説によると、コーギーは上毛と下毛のあるダブルコートで、冬に下毛をたっぷり蓄えるため、換毛期には非常にたくさんの毛が抜けるそうです。こまめなブラッシングがすすめられていました。全身のカットは基本的に必要ありません。
柴犬やポメラニアンを調べたときと同じ、「カット代はかからないけれど、抜け毛の掃除がある」タイプの犬種です。トリミングに通うレオやあんずとは、お世話の中身がずいぶん違います。
運動は1日30分から1時間
同じ解説では、牧畜犬だったので必要な運動量が多く、1日あたり30分から1時間は散歩を含めた運動をさせてあげたい、とされていました。武藤獣医師の解説でも、大変エネルギッシュで、多くの運動量を必要とすると書かれています。
太らせないことが、腰と関節を守る
武藤獣医師の解説には、運動不足になると肥満になりやすく、脊椎や関節を痛める可能性があると書かれていました。アニコム損保の解説でも、ブラッシングは体に触って「ちょっと太ってきたかも」と気づくよい機会になる、とされています。胴の長い犬種の腰のことは、ミニチュアダックスの記事でも調べました。
🐾 換毛期の抜け毛に「ワンプッシュで毛が取れるブラシ」、台所の盗み食い対策に「置くだけフェンス」
抜け毛の多い犬種のブラッシングと、入ってほしくない場所を区切る道具の一例です(わが家の使用品の紹介ではありません)。フェンスは高さを確かめ、飛び越えたり倒したりしないかを見てから使ってください。
運動量や食事の量には個体差があります。子犬やシニア、持病のある子は、かかりつけの先生に相談しながら決めてください。
コーギーがかかりやすい病気|椎間板ヘルニアと変性性脊髄症
アニコム損保の解説と、武藤獣医師が監修した解説で挙げられていた病気を、家庭で気づけるサインと一緒にまとめました。
変性性脊髄症(DM)は、10歳を過ぎてから出る病気
岐阜大学動物病院の神経科は、コーギーの変性性脊髄症についてくわしい解説を公開しています。それによると、変性性脊髄症は痛みを伴わず、ゆっくりと進行する脊髄の病気。ペンブロークの場合、症状は10歳過ぎから現れるのが典型的で、3年くらいかけてゆっくり進むそうです。
症状は後ろ足から始まります。初期のサインとして挙げられていたのは、次のようなものでした。
- 後ろ足をすって歩く:足の甲を地面にすり、アスファルトの上だと爪がすれる音がする。爪の上側がすり減ってくる
- 腰のふらつき、後ろ足の交差:腰が左右にふらふらする。後ろ足を交差させて歩く。2本の後ろ足をそろえてウサギ跳びのように歩くこともある
進むと前足にも広がり、最後は呼吸にも影響が出る、と書かれていました。残念ながら、いまのところ治す治療法はありません。
ただ、この解説でいちばん心に残ったのは、その次の一文でした。「病気をよく知り、適切なケアをしてあげれば、DMを発症しても幸せな時間を過ごすことが出来る」。飼い主と主治医に知っておいてほしいこととして、そう書かれています。
椎間板ヘルニアと症状が似ている
同じ解説には、これらの症状は変性性脊髄症だけのものではなく、コーギーに多い椎間板ヘルニアなどでも同じように見られると書かれていました。両方を持っている犬もいるそうです。だからこそ、こうした症状が見られたら動物病院で精密検査を受けることが大切、とされています。
原因については、2008年に関係すると考えられる遺伝子(SOD1)の変異が見つかっています。アニコム損保の解説では、両親犬の遺伝子を調べて、発症の可能性がある子を増やさないようにすることが、いまできることだと書かれていました。
わが家のレオは16歳。足腰が弱ってきたシニア犬との暮らしは老犬レオと3歳あんずの寝姿がシンクロにも書きました。犬種は違っても、「歩き方の小さな変化に気づく」ことの大切さは同じだと感じます。
ここに挙げたのはあくまで気づくためのきっかけで、診断ではありません。あてはまるところがあっても自己判断はせず、気になる様子があれば動物病院に相談してください。
コーギーを迎えるときに知っておきたいこと
親犬の遺伝子検査のことを聞いてみる
変性性脊髄症は遺伝子の変異が関わる病気です。ブリーダーから迎えるなら、両親犬の遺伝子検査をしているかを聞いておきたいところです。
毎日の運動と、抜け毛の掃除を続けられるか
1日30分から1時間の運動と、換毛期の抜け毛。見た目のかわいさだけで決めず、10年以上続けられるかを考えておきたい犬種です。
「8週齢」のルール
環境省が定める動物愛護管理法では、繁殖業者が生まれてから56日(8週齢)を過ぎない子犬を、販売のために引き渡したり展示したりすることは禁止されています(令和3年6月1日施行)。
迎え方の3つの道
子犬の価格は時期やお店によって変わります。検討される際はご自身で最新の情報を確認してください。
同じく胴の長い犬種はミニチュアダックスの性格と飼いやすさは?で、抜け毛の多いダブルコートの犬種は柴犬の性格と飼いやすさは?で調べています。
コーギーについてよくある質問
寿命はどのくらい?
アニコム損保の「家庭どうぶつ白書2021」では、ペンブロークの平均寿命は12.5歳とされています。
しっぽは生まれつきないの?
以前は短く断尾するのが習慣でした。FCIの標準には、断尾しないしっぽの持ち方と、生まれつき短いしっぽの子がいることの両方が書かれています。
小型犬?中型犬?
体高は約25〜30cmですが、体重はオス10〜12kg、メス9〜11kgあり、中型犬に分類されます。
抜け毛は多い?
ダブルコートで、抜け毛の多い犬種です。換毛期にはさらに増えます。
トリミングは必要?
基本的に必要ありません。日ごろのブラッシングが中心です。
レオ
ゆっくりでも、いっしょに歩ける時間がうれしいんだよ。
ハル
これで21犬種目。次は日本スピッツを調べてみようかな。



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