もうひとつ、どの資料にも必ず出てきたのが心臓の病気の話でした。若いうちから気をつけたい犬種だそうです。
この記事では、ジャパンケネルクラブと国際畜犬連盟の犬種標準をたどりながら、名前の由来・4つの毛色・被毛・性格・心臓とそのほかの病気・迎え方までをまとめます。トイプードルのレオとシーズーのあんずと暮らしている立場からの実感もまじえました。
ハル
あの長い耳の毛も、そのままの姿がいいってことなんだね。
あんず
あんずはカットしてもらうの、けっこう好きなんだもん!
レオ
それと、心臓のことは若いうちから気にかけてあげたい犬種なんだ。
タル吉
わしも、ゆっくり脈打つ心臓を大事にしておるぞ。
ハル
やさしい顔の裏にある、大事な健康の話も調べてきたよ。
キャバリアってどんな犬?「騎士」の名を持つイギリスの愛玩犬
原産国はイギリスです。ジャパンケネルクラブ(JKC)の犬種標準によると、キャバリアはキング・チャールズ・スパニエルという犬種から生まれた犬で、それよりやや大きく、マズル(口吻)が長いのが特徴です。
キング・チャールズ・スパニエルがマズルの短い姿に変わっていったことに対して、昔の姿を取り戻そうとする運動から生まれたのがキャバリアだそうです。「キャバリア」は中世の騎士のこと。昔の姿を取り戻したい、という思いが名前にも込められているんですね。
日本では、JKCの2025年の犬籍登録頭数で3,471頭、第17位です。
体重5.4〜8kgというのは、これまで調べてきた犬種のなかではいちばん大きめです。レオやあんずより、ひと回り大きい子が多いということになります。
キャバリアの4つの毛色|ブレンハイムの「ひし形の斑」

ブレンハイムの頭のまん中の斑に注目です。
犬種標準で認められている毛色は、次の4つです。
いちばん印象に残ったのが、ブレンハイムの「ひし形の斑」です。標準にはわざわざ「この犬種独自の特徴である」と書かれていました。頭のてっぺん、耳と耳の間にぽつんとある栗色の点のことです。キャバリアを見かけたら、ついおでこを見てしまいそうです。
標準には「ほかの毛色や色の組み合わせは極めて好ましくない」ともあります。4色だけ、という決まりのシンプルさは、毛色の種類がとても多いダックスやパピヨンとは対照的でした。
キャバリアの被毛|カットはいらないが、抜け毛はある
国際畜犬連盟(FCI)の犬種標準は、被毛を「長く、絹のようで、巻き毛はない。軽いウェーブは許容。飾り毛が豊か。トリミングは一切しない(Totally free from trimming)」と説明しています。
これまでの犬種と並べると
アニコム損保の解説でも、キャバリアはサロンでのトリミングは必要ない一方、ダブルコートなので換毛期にはよく毛が抜けるとされていました。つやのある被毛を保つには、毎日のブラッシングが欠かせないそうです。
🐾 絹のような被毛と垂れ耳のケアに「獣毛ブラシ」と「イヤークリーナー」
毎日のブラッシングと、耳のお手入れの一例です。耳をかゆがる、においが強いときは、お手入れより先に動物病院へ。
① 毎日のブラッシングに|ミニ獣毛ブラシ No.204
3,300円 税込
② 耳のお手入れに|ノルバサン オチック 118ml
1,914円 税込
カットがいらないぶんサロン代はかかりませんが、抜け毛の掃除とブラッシングの時間はしっかりかかる。これまでの犬種調べで見えてきた「毛の手間は減らせず、形を変えるだけ」という話が、ここでも当てはまりました。
長い耳の飾り毛は絡まりやすいので、足裏の毛や耳の中の毛など、衛生のために整える部分はあります。
キャバリアの性格|恐れ知らずで、攻撃性がない
JKCの犬種標準には、性格が「運動好きで、愛情深く、恐れ知らずである。明るく、友好的で攻撃性はない。神経質な傾向も見られない」と書かれています。アニコム損保の解説でも、賢く穏やかで愛情深く、とても社交的とされていました。
「恐れ知らず」と「攻撃性がない」が並んでいるのが面白いところです。チワワの標準にあった「大変勇敢」は、気の強さに近いニュアンスでした。キャバリアの「恐れ知らず」は、だれにでも物おじせず近づいていく人なつこさに近いのだと思います。
運動が好きな犬種とされているので、室内だけでなく、毎日の散歩やおもちゃでの遊びで体を動かしてあげることがすすめられていました。
ハル
キング・チャールズ・スパニエルの性格やお世話、かかりやすい病気をまとめています。
多頭飼いはどうか
友好的で攻撃性がないとされるので、多頭飼いには向いている部類だと考えられます。体重5.4〜8kgと、小型犬のなかでは大きめなので、レオやあんずより体の小さい子と遊ぶときは、勢いに少し気をつけたいところです。多頭飼いの様子はトイプードルとシーズーの多頭飼いで紹介しています。
キャバリアの心臓|僧帽弁閉鎖不全症は若いうちから
キャバリアについて調べると、必ず出てくるのが僧帽弁閉鎖不全症という心臓の病気です。心臓の弁がしっかり閉じなくなり、血液が逆流してしまう病気で、小型犬では中高齢になって見つかることが多いとされています。
ところが、アニコムグループの柴田動物病院(福井市)の解説によると、キャバリアは遺伝的にこの病気になりやすい犬種で、若いうちから発症することが知られているそうです。アニコム損保の犬種解説でも、4〜5歳ごろから発症することがあるとされていました。
どれくらい早いのか、数字で示している解説もありました。ちゅら動物病院によると、ほかの犬種では最初の診断が平均12歳なのに対し、キャバリアは平均6.5歳。同じ病気でありながら、診断がおよそ5年半も早いことになります。さらに10歳までにほとんどの犬でこの病気がみられるとも説明されていました。
シニアになってから気にする病気、という感覚では間に合わないということです。まだ元気な若いうちから、聴診を受けておく理由がここにあります。
家庭でできること
- 若いうちから定期的に健康診断を受け、心臓の音を聴いてもらう
- ふだんの安静時の呼吸数を数えて、記録しておく
- 運動したときの疲れ方や、咳の有無を見ておく
心雑音が見つかった場合、確定診断には超音波(エコー)検査が必要とされています。症状が出る前に見つけて、経過を見ていくことが大切な病気です。
咳が出る、疲れやすいといった様子があれば、様子を見ずに早めに動物病院へ相談してください。
そのほかキャバリアで気をつけたい病気
脊髄空洞症(キアリ様奇形)
もうひとつ、キャバリアで知っておきたいのが脊髄空洞症です。アニコム損保の病気解説によると、頭の後ろの骨の形の異常(キアリ様奇形)によって脳脊髄液の流れが変わり、脊髄の中に液体のたまった空洞ができる病気です。
家庭で気づけるサインとして、首や体をしきりにひっかく、手足の先をなめる、足を浮かせて着けようとしない、体を触られるのを嫌がる、といった様子が挙げられていました。かゆみやクセに見えることもあるので、続くようなら動物病院で相談したいところです。
どれくらい多いのかというと、ONE千葉どうぶつ整形外科センターが運営する解説サイトでは、キャバリアの最大で70%が脊髄空洞症と診断されているという報告もあると紹介されていました。画像で調べれば見つかること自体は珍しくない、という受け止め方になります。
岐阜大学動物病院 神経科の解説では、この病気でもっとも多い症状は知覚過敏や痛みで、首や体をかくしぐさ(スクラッチング)が見られることがある、とされています。ふつうのかゆみと違って、後ろ足が皮膚に届いていないのに掻く動作だけを続けることがあるのが特徴的だといわれます。皮膚に異常が見あたらないのにこの動きが続くなら、皮膚のトラブルではない可能性も頭に置いておきたいところです。
同じ解説では、空洞そのものを正確に見るにはMRIの撮影が必要とされています。また好発犬種として、キャバリアのほかにヨークシャー・テリア、チワワ、ポメラニアンといった小型犬の名前も挙がっていました。このブログで犬種記事にしてきた顔ぶれと重なっていて、少し驚きました。
目の乾き(ドライアイ)など
アニコム損保の犬種解説では、ドライアイなどの目のトラブルにも注意が必要とされていました。目やにが増えた、目をしょぼしょぼさせる、といった変化に気をつけます。
垂れ耳のケア
大きな垂れ耳は、中が蒸れやすくなります。耳のにおいや汚れを、ときどき確かめる習慣があると安心です。あんずも垂れ耳なので、耳のケアはわが家でも身近なテーマです。
そのうえで、キャバリアにはもうひとつ耳の話があります。ダクタリ動物病院 東京医療センターの解説によると、原発性分泌性中耳炎(PSOM)という、キャバリアに特徴的に発症するとされる中耳炎があるそうです。骨格や体質が関わると考えられている、慢性で再発しやすいタイプだと説明されていました。
厄介なのは、外耳炎が見あたらないのに耳のあたりを気にする、という形であらわれることです。耳の掃除でたどり着けるのは鼓膜の手前までで、この病気で粘液がたまるのはその奥の中耳。家庭でのぞいて分かるものではありません。同センターの症例では、鼓膜のにごりやリンパ節の腫れから疑い、鼓膜に針を刺して粘液を取り除くことで症状が改善したとされています。
耳をきれいにしているのに気にし続ける、片方だけ頭を傾ける、呼んでも反応が鈍い——そんなときは「耳掃除が足りない」と考える前に、動物病院で耳の奥まで診てもらうという選択肢があります。
後ろ足のスキップと、興奮したときの転倒
ONE千葉どうぶつ整形外科センターの解説には、キャバリアで知っておきたい2つが挙げられていました。
ひとつは膝蓋骨脱臼(パテラ)。膝のお皿が本来の溝から外れてしまうもので、アメリカの報告ではキャバリアの有病率は20%と高いとされています。気づけるサインは、歩いていて片足だけをスキップするように浮かせること。小型犬でよくある話ですが、レオもあんずも小型犬なので、わが家でも気にしているところです。
もうひとつが発作性転倒(エピソディック・フォーリング)。1〜4歳という若さで発症し、ストレスや興奮が引き金になって足が突っ張り、転んでしまうという、この犬種に特徴的なものです。BCANという遺伝子の異常が原因とされ、遺伝子検査ができます。
「はしゃいだら転んだ」を性格やそそっかしさで片づけず、繰り返すなら動画に撮って動物病院で見てもらう——それが役に立つ場面です。
血液検査で「血小板が少ない」と言われたとき
これは病気の話というより、キャバリアを診てもらうときに知っておくと役に立つ体質の話です。
せがわ動物病院の解説によると、キャバリアにはβ1チューブリンという、細胞の骨組みを作るたんぱく質の遺伝子に変異を持つ子が一部いて、血小板がうまく小さく成形されず大きな血小板ができることがあるそうです。血液検査の機械は大きさで数えているため、この大きな血小板が数えられず、「血小板がとても少ない」という結果になることがあります。
ところが同じ解説では、この巨大血小板は止血の能力も十分にあり、日常生活に困らないとされていると説明されていました。つまり、数字は少なく出るのに体は元気、ということが起こりえます。
もし健康診断で血小板の数値を指摘されたら、あわてる前に「キャバリアです」と伝えて、顕微鏡で実際の血小板を見てもらえないか相談する——それだけで話が早く進むかもしれません。もちろん、本当に治療が必要な血小板の病気もあります。判断は必ず獣医師にゆだねてください。
ここに挙げたのはあくまで気づくためのきっかけで、診断ではありません。あてはまるところがあっても自己判断はせず、気になる様子があれば動物病院に相談してください。
キャバリアを迎えるときに知っておきたいこと
親犬の心臓の検査
僧帽弁閉鎖不全症は遺伝的になりやすいとされる病気なので、ブリーダーから迎える場合は、親犬が心臓の検査を受けているかを聞いておくと安心です。
「8週齢」のルール
環境省が定める動物愛護管理法では、繁殖業者が生まれてから56日(8週齢)を過ぎない子犬を、販売のために引き渡したり展示したりすることは禁止されています(令和3年6月1日施行)。どの経路で迎えるにしても共通の決まりです。
迎え方の3つの道
子犬の価格は血統や毛色で幅がとても大きく、信頼できる形で「いくら」と書ける情報が見つかりませんでした。検討される際はご自身で最新の情報を確認してください。キャバリアの場合は、トリミング代がかからないかわりに、定期的な心臓の検査の費用を見込んでおくことが大切だと思います。
キャバリアとシーズーの違い|レオ・あんずと比べて見えてきたこと

キャバリアは2頭よりひと回り大きめです。
キャバリアとシーズー(あんず)の違い
シーズーのあんずと並べると、こんな違いがあります(数字は犬種標準と、この記事・シーズーの記事で紹介したアニコム損保のデータから)。
体重の幅はほとんど同じですが、お金と時間のかかり方が正反対です。シーズーはカットに通い続け、キャバリアはカットのかわりに心臓の定期検査。あんずの目や呼吸に気を配るのと同じように、キャバリアは見えない心臓に目を向ける犬種だと感じました。
8犬種を調べて、ひとつはっきりしてきたことがあります。「お金がかかるところ」は犬種ごとに違うということです。
- マルチーズ・ビションフリーゼ・シーズー…生涯のトリミング代
- ポメラニアン・パピヨン…トリミング代は少なめ、そのかわりブラッシングと抜け毛
- キャバリア…トリミング代はほぼなし、そのかわり心臓の定期検査
キャバリアは、見た目のお手入れは比較的シンプルなかわりに、見えない心臓のケアに目を向ける犬種でした。「毎日の呼吸数を数える」という習慣は、キャバリアに限らず、シニアになったレオやあんずにも役立ちそうです。
犬種の情報は、あくまで入口だと思っています。それでも傾向を知っておくと、迎えたあとの暮らしがぐっと想像しやすくなります。ほかの犬種はビションフリーゼの性格と飼いやすさは?、パピヨンの性格と飼いやすさは?、マルチーズはシーズーとどう違う?にまとめました。
- あんず|シーズー・3歳。トリミングはわが家では2〜3か月おき(目安の1〜1.5か月より長めになりがち)→ トリミング頻度の記録
- レオ|トイプードル・16歳。体重は4kg程度。毎日ブラッシングして、月1回のトリミングは必須でした → レオとの出会い
- 寝方もちがいます。あんずは寝相が七変化、レオはくるんと丸まって寝ることがほとんど → 2匹の寝相くらべ
キャバリアについてよくある質問
キャバリアとアメリカン・コッカーの違い(大きさ・毛・病気)は、キャバリアとアメリカンコッカーの違いは?で表にまとめています。
寿命はどのくらい?
アニコム損保の解説では、アニコム「家庭どうぶつ白書2023」をもとに12.3歳と紹介されていました。これまで調べた犬種(多くは14歳前後)と比べると、やや短めです。
トリミングは必要?
犬種標準に「トリミングは一切しない」とある犬種で、サロンでのカットは必要ないとされています。ただし毎日のブラッシングと、足裏や耳まわりなど衛生のためのお手入れは必要です。
抜け毛は多い?
ダブルコートなので、換毛期にはよく抜けるとされています。カットがいらないぶん、抜け毛の掃除とブラッシングの時間を見込んでおくのが現実的です。
心臓の検査はいつから?
キャバリアは若いうちから僧帽弁閉鎖不全症を発症することがあるとされています。何歳から、どのくらいの間隔で検査するかは、かかりつけの動物病院と相談して決めるのが安心です。
ハル
キャバリアと同じ小型犬のノーフォークテリア。性格とお世話、かかりやすい病気をまとめています。
レオ
見えないところを気にかけてもらえるのって、うれしいね。
ハル
これで8犬種目。次はどの子のことを調べようかな。










コメント
[…] 名前が似ているキャバリア・キング・チャールズ・スパニエルや、同じ短頭種のペキニーズの記事もあわせてどうぞ。 […]
[…] 数字は、犬種図鑑の各記事(キャバリア・アメリカン・コッカー・スパニエル)で調べたものです。 […]
[…] キャバリアは体重5.4〜8kgと小型犬のなかでは大きめなので、自分より小さい子と遊ぶときの勢いには少し気をつけたいところです。 […]
[…] […]