結論から書くと、今の獣医行動学では「順位付けのサイン」という考え方は否定されています。元になった「アルファ狼」の説は、言い出した研究者本人が取り消していました。
この記事では、ほぼ毎晩おなかの上に乗ってくる3歳のシーズー・あんずの写真といっしょに、
順位付け説の出どころ、上に乗る本当の理由、それでも見直したほうがいい場合をまとめます。
ハル
でも本で「飼い主の上に乗るのは、自分が上だと思っているから。しつけとしてよくない」って読んで、ちょっとドキッとしたよ。
あんず
ハルの上、あったかくて好きなの!
レオ
順位なんて、考えたこともなかったけどね。
タル吉
元の研究までたどってみるとよいのう。
ハル
シーズーのあんずは毎晩おなかの上に|どかしてもまた乗ってくる
夜、横になってくつろいでいると、あんずがのっそり上がってきます。
わたしのおなかや胸の上に乗って、ほぼ毎晩そのまま落ち着きます。

ここが、あんずの特等席です。
いちばんのお気に入りは、足の間、股の先あたり。
体の上でもぞもぞ動いて、そこにぴたっと収まると、やっと落ち着いたように見えます。
重くて一度どかしても、またすぐ乗ってきます。
何度どかしても戻ってくるので、最後はわたしのほうがあきらめます。

ここまでくると、もう動けません。
16歳のトイプードル・レオも、若いころはよく乗ってきました。
でも、いまは乗ってきません。今の上に乗る係は、あんずだけです。
そんなとき、本で「飼い主の上に乗るのは、自分が上だと思っているから。しつけとしてやめさせたほうがいい」という話を読みました。
かわいいので許していたけれど、本当はよくないのかな?と気になって、調べてみることにしました。
犬が上に乗るのは順位付け?「アルファ狼」説の出どころと取り消し
「犬は家族に順位をつける」「高い所や人の上にいるのは、自分が上だと思っているから」という考え方は、オオカミの研究から広まりました。
メック博士によると、野生のオオカミの群れは親とその子どもたちの家族でした。
順位争いに見えたのは、血のつながらない大人のオオカミを、狭い飼育場にいっしょに入れていたからだったそうです。
今の獣医さん側の考え方
米国獣医動物行動学会(AVSAB)は、「支配性(ドミナンス)理論」を使ったしつけについての声明を出しています。
そこでは、膝に乗る・飛びつくといった行動は、上の立場をねらっているのではなく、そうすると構ってもらえると学んだ結果だと書かれています。
あわせて、犬を仰向けに押さえつけるような、力で上下を教えるやり方は、犬の怖さや不安を強め、かえって攻撃が増えることがあるとして、すすめていません。
日本でも、獣医行動学の専門家が「犬は家族を順位付けする」は迷信だと話している記事がありました(東洋経済オンライン)。
記事によって答えが割れる理由
「やめさせるべき」と書く記事は、1970〜90年代のアルファ狼の考え方をもとにした、古いしつけ本の内容を引いていることが多いようです。
「気にしなくていい」と書く記事は、2000年代以降の獣医行動学をもとにしています。
わたしが読んだ本も、古い考え方のほうだったのかもしれません。
犬が飼い主の上に乗る本当の理由|甘え・安心・ぬくもり
では、あんずはなぜ乗ってくるのか。資料に出てきた理由は、主にこの3つでした。
- 安心できる・甘えたい:信頼できる相手にくっついていたい
- あたたかい:人の体は、ソファやクッションよりあたたかい
- 構ってもらえる:乗ると、なでてもらえる・声をかけてもらえると覚えている
麻布大学の菊水健史先生たちの研究(2015年・Science)では、犬と飼い主が見つめ合うと、犬と人の両方で「オキシトシン」というホルモンが増えることが分かっています。
体をくっつけて過ごす時間も、こうした絆とつながっているのかもしれません。
シーズーは、昔の中国の宮廷で、人のそばにいる愛玩犬として大事にされてきた犬種です。
人のそばにいるのが好きな性質と、乗ってくるのは、つながっているように思えます。
あんずが毎晩わたしの上を選ぶのも、えらくなりたいのではなく、あったかくて安心できる場所だからだと思うことにしました。
ハル
犬が上に乗るのを許していい場合と見直したい場合
上に乗ること自体は、順位付けのサインではありません。
ただ、資料を読むと、そのままにしないほうがいい場合もありました。
どかすとうなるときは「場所の守り」
ソファや人の上から降ろそうとしてうなるのは、「自分が上」と思っているからではなく、気に入った場所を取られたくない「リソースガーディング(資源の守り)」と説明されていました。
叱ったり、無理に引きずり降ろしたりすると、かえって強くなることがあるそうです。
おやつを床に投げて自分から降りてもらい、降りたらほめる。落ち着いているときに「おりて」の合図を練習する、というやり方がすすめられていました。
小型犬は飛び降りに気をつける
シーズーやトイプードルは、椎間板ヘルニアになりやすい犬種としてよく名前が挙がります。
高い所から飛び降りるのは、背中や足に負担がかかります。ソファにステップやスロープを置く、降りるときは抱っこして床に下ろす、といった工夫が紹介されていました。
いっしょに寝るなら
米国メイヨー・クリニックの研究では、犬が同じ寝室にいても人の眠りはよく保たれていましたが、ベッドの上にいると、少し眠りが浅くなる結果でした。
また、獣医師会などは、同じ布団で寝るときは、ノミ・ダニの予防や、寝具をこまめに洗うことをすすめています。
わが家のあんずは、どかしてもまた乗ってきますが、うなることはなく、またくっつきに来るだけです。
だから、わが家の結論は「かわいいから許す」。
そのかわり、飛び降りには気をつけて、降りるときは抱っこで下ろしてあげようと思います。
よくある質問
Q. 犬が飼い主の上に乗るのは、自分が上だと思っているから?
A. 今の獣医行動学では、そうは考えられていません。元になった「アルファ狼」の説は、1999年に研究者本人が取り消しています。甘え・安心・あたたかさ・構ってほしい、などが理由として挙げられています。
Q. 上に乗るのはやめさせたほうがいい?
A. 素直に降りられて、飼い主も困っていなければ、無理にやめさせる必要はないとする資料が多いです。どかすとうなる、高い所から飛び降りる、寝不足が続く、といったときは見直しましょう。
Q. お腹の上に乗ってくる犬の心理は?
A. 信頼できる相手にくっついて安心したい、あたたかい、なでてもらえる、などと説明されています。
Q. どかすとうなるときは?
A. 場所を取られたくない「リソースガーディング」のことがあります。力で降ろさず、おやつで自分から降りてもらってほめる練習がすすめられています。強くなる・噛むときは、獣医さんや行動の専門家に相談してください。
参考:L. David Mech「Alpha status, dominance, and division of labor in wolf packs」(Canadian Journal of Zoology, 1999)/AVSAB「Position Statement on the Use of Dominance Theory in Behavior Modification of Animals」/Nagasawa et al.「Oxytocin-gaze positive loop and the coevolution of human-dog bonds」(Science, 2015)/Patel, Krahn et al.「The Effect of Dogs on Human Sleep in the Home Sleep Environment」(Mayo Clinic Proceedings, 2017)/東洋経済オンライン「犬は家族を順位付けする」が迷信にすぎない訳
ハル
あんず
足の間がいちばん好きなんだもん!
ハル
でも、高い所から飛び降りるのはやめようね。降りるときは、抱っこで下ろしてあげるよ。









コメント