国際畜犬連盟(FCI)の犬種標準を読むと、毛色の項目はたった2文でした。「いろいろな毛色が認められる。ただし白が多くを占めてはならない」。前回調べたビーグルは「しっぽの先は白」と決まっていたので、ちょうど反対です。
この記事では、FCIの犬種標準、ジャパンケネルクラブ(JKC)の登録数、獣医師や専門家が監修した解説、そして日本の大学の研究をたどりながら、歴史・性格・運動量・被毛・かかりやすい病気・遺伝病の検査・迎え方までをまとめました。
ハル
シェルティと同じ、羊をまとめる牧羊犬なんだ。
あんず
あんずより、お手が上手なの?
レオ
日本の大学が、遺伝病を減らした研究もしているんだって。
タル吉
わしは一日じっとしていても退屈せんがのう。
ハル
じゃあ、ボーダー・コリーの歴史から紹介していくね。
ボーダー・コリーってどんな犬?イングランドとスコットランドの国境の牧羊犬
ヤマザキ動物看護大学の福山貴昭准教授が監修した解説(いぬのきもち)によると、ボーダー・コリーの祖先は8世紀後半から11世紀にかけて、バイキングがイギリスに持ち込んだトナカイ用の牧畜犬とされています。イングランドとスコットランドの国境(ボーダー)あたりで活躍したことが、名前の由来だそうです。
体重は犬種標準では決められていません。福山准教授監修の解説では、体高53cm前後、体重14〜22kgの中型犬とされていました。
JKCの2025年の犬籍登録頭数では、ボーダー・コリーは4,640頭で第14位。同じ牧羊犬のシェットランド・シープドッグ(2,628頭・第24位)より多く、ラフ・コリー(120頭・第59位)とは40倍近い差がありました。
ボーダー・コリーの性格|粘り強く、よく働き、とても素直
FCIの犬種標準の性格の項目を訳すと、こう書かれていました。「粘り強く、よく働き、とても扱いやすい。熱心で、注意深く、よく応え、賢い。神経質でも攻撃的でもない」。
動き方の項目もボーダー・コリーらしい書き方でした。「なめらかで疲れを知らず、足をあまり上げない。とても静かに、すばやく動ける印象を与える」。羊に気づかれないよう、低い姿勢でそっと回りこむ牧羊犬の姿が目に浮かびます。

羊の群れをまとめる牧羊犬の動きです。
福山准教授監修の解説では、思慮深く、飼い主にとても忠実で、全犬種の中でもトップクラスの知能を持つとされていました。
賢いからこそ、刺激の多い暮らしでは疲れることも
ワンクォールで白山聡子獣医師が監修した解説では、ボーダー・コリーは牧羊犬としてまわりの情報を集める力と高い身体能力を育ててきた犬種で、明るい性格の一方、刺激の多い都会の暮らしではストレスを感じることがあるとされていました。
同じ解説では、子犬のうちに掃除機やインターホンなどの音に慣らしておくことがすすめられていて、苦手そうな音はおやつと組み合わせて「いいこと」と結びつける方法が紹介されていました。性格には個体差があるので、あくまで一般にそう言われている、というお話です。
ボーダー・コリーの運動量とお世話|朝晩30分以上+頭を使う遊び
散歩は朝晩30分以上。それだけでは足りないことも
福山准教授監修の解説では、散歩は毎日、朝晩30分以上が必要とされ、ドッグランでの自由運動やドッグスポーツもすすめられていました。白山獣医師の解説でも、毎日の散歩に加えて、広い公園やドッグランで定期的に発散させてあげるように、と書かれています。同じ朝晩30分でも、シェルティより一段多めの運動を考えておきたい犬種です。
体だけでなく頭も使わせてあげると満足しやすそうです。おやつを探す遊びは知育玩具の記事でも試しています。
🐾 たっぷり走りたい子に「やわらかい犬用ディスク」と「ボールを遠くへ投げられるランチャー」
広い場所で思いきり走らせてあげたいときの道具の一例です(わが家の使用品の紹介ではありません)。ジャンプのしすぎは関節に負担がかかることもあるので、子犬やシニアは高さと回数に気をつけてください。
被毛は「長毛」と「スムース」の2種類
FCIの標準では、どちらのタイプも上毛は密で、下毛は柔らかく密。雨風に強いダブルコートです。長毛タイプは、首まわりのたてがみ、太もものうしろの飾り毛、ふさふさのしっぽになりますが、顔・耳・前足(飾り毛以外)・かかとから下は短くなめらかとされていました。耳は立ち耳か半立ち耳のどちらでもよいそうです。
福山准教授監修の解説では、ブラッシングは週2回程度、換毛期はシャンプーの回数を増やす、とされていました。
暑い日はエアコンと、涼しい時間の散歩
同じ解説では、暑い時期はエアコンで過ごしやすい環境を整え、散歩は早朝か日没後に、とすすめられていました。
運動量や散歩の時間は個体差があります。子犬やシニア、持病のある子は、かかりつけの先生に相談しながら決めてください。
ボーダー・コリーの毛色|何色でもいい、でも「白が多すぎてはだめ」
FCIの犬種標準の毛色の項目は、「いろいろな毛色が認められる。白が多くを占めてはならない」の2文だけでした。福山准教授監修の解説では、トライカラー、ブラック&ホワイト、ブルーマールなどが紹介されています。
目は茶色が基本ですが、マールの子は片目、両目、または目の一部が青くてもよいとされていました。鼻は黒が基本で、茶色(チョコレート)の子は茶色、ブルーの子は灰色がかったスレート色、と毛色に合わせて決められています。

ブルーマール、レッド&ホワイト。どの子も白は控えめです。
しっぽは低い位置からついて、先が上向きにくるりと巻きあがる形。興奮すると上がることはあっても、背中の上に乗せることはないとされていました。
ボーダー・コリーがかかりやすい病気|関節と目
獣医師や専門家が監修した解説で、ボーダー・コリーに多いと挙げられていた病気をまとめました。
股関節形成不全は、生後4か月〜1歳ごろに
白山獣医師監修の解説では、股関節形成不全は遺伝的な要因で股関節がうまく形づくられない病気で、生後4か月〜1歳ごろに気づかれることが多いとされていました。走り方や座り方がいつもと違う、腰を振るように歩く、といった様子があれば相談したいところです。
コリー眼異常
同じ解説では、コリー眼異常は遺伝性の目の病気で、軽いものから重いものまで幅があるとされていました。シェルティの記事でも出てきた、コリー系の犬に多い病気です。
ここに挙げたのはあくまで気づくためのきっかけで、診断ではありません。あてはまるところがあっても自己判断はせず、気になる様子があれば動物病院に相談してください。
日本のボーダー・コリーと遺伝病「CL」|検査で新しい発症がゼロになった話
調べていて、いちばん心に残った研究があります。鹿児島大学などの研究グループが2012年に発表した、日本のボーダー・コリーの神経セロイドリポフスチン症(CL)についての論文(The Scientific World Journal)です。
CLは、脳の神経がだんだん働かなくなっていく遺伝性の病気で、若いうちに命を落としてしまいます。論文によると、2000〜2011年の12年間に日本で27頭の発症が確認され、症状を追えた23頭の平均寿命は26.4か月でした。
原因は「同じ祖先」と、知らずに続いた繁殖
血統を調べると、日本の発症犬と保因犬は、すべてオセアニアから輸入された、共通の祖先を持つ保因犬につながっていました。病気のことを知らないまま、その血統が繁殖に多く使われたことが、日本で多い理由かもしれない、と論文には書かれています。日本のボーダー・コリーで、病気の遺伝子を1つ持つ「保因犬」の割合は8.1%と報告されていました。
繁殖犬を調べるようになって、発症が減った
そして論文の表では、発症犬の数は2010年から調査時点(2012年6月)まで0頭。論文は、病気を防ぐには繁殖に使うすべての犬を検査することが必要で、そうした取り組みが最近の減少につながっている可能性がある、と結んでいました。
この病気は、両親から1つずつ病気の遺伝子を受け継いだときに発症するタイプです。だからこそ、親犬を検査して組み合わせを選ぶことで防げる。ブリーダーさんから迎えるなら、「親犬はCLの検査をしていますか?」と聞いてみる価値があると思いました。
ボーダー・コリーを迎えるときに知っておきたいこと
「8週齢」のルール
環境省が定める動物愛護管理法では、繁殖業者が生まれてから56日(8週齢)を過ぎない子犬を、販売のために引き渡したり展示したりすることは禁止されています(令和3年6月1日施行)。
迎え方の3つの道
子犬の価格は時期やお店によって変わります。検討される際はご自身で最新の情報を確認してください。
わが家の視点|シーズーのあんず、シェルティと比べてみた
ボーダー・コリーの理想の体高はオス53cm。シーズーの犬種標準は27cm以下なので、あんずのほぼ倍の高さです。同じ牧羊犬のシェルティ(オス37cm)と比べても、ひと回り以上大きな中型犬です。

同じ牧羊犬でも、ボーダー・コリーはひと回り大きめです。
あんずは散歩も好きですが、帰ってきたらソファでとろ〜んとしている時間のほうが長い子です。毎日しっかり走らせて、頭も使わせてあげる暮らしは、わが家の2匹とはだいぶ違いそう。牧羊犬の仲間ではコーギーも調べているので、比べてみてください。運動量の多い犬ではジャックラッセルテリアの記事も参考になると思います。
ボーダー・コリーについてよくある質問
大きさは?
FCIの標準では理想の体高はオス53cmで、メスは少し小さめ。福山准教授監修の解説では体重14〜22kgの中型犬とされています。
初心者でも飼える?
とても賢く素直な一方、運動と頭を使う遊びがたっぷり必要です。毎日朝晩30分以上の散歩に加えて、遊びの時間をとれるかどうかがポイントになります。
毛色は何色がある?
犬種標準では、いろいろな毛色が認められていて、白が多くを占めてはいけない、とだけ決められています。ブラック&ホワイト、トライカラー、ブルーマールなどがよく見られます。
遺伝病の検査はある?
神経セロイドリポフスチン症(CL)は遺伝子で保因犬が分かり、繁殖犬を検査することで発症を防げるとされています。迎える前に、親犬の検査についてブリーダーさんに聞いてみてください。
あんず
あんずは、走ったあとのお昼寝のほうが得意なの!
ハル
これで25犬種目。次は日本スピッツの記事で約束した、サモエドを調べてみようかな。




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