かわいい鼻ぺちゃの顔は、呼吸のしづらさや暑さへの弱さと背中合わせ。犬種標準そのものが、そこに気をつけるよう書き直されていたんですね。
この記事では、ジャパンケネルクラブと国際畜犬連盟の犬種標準をたどりながら、生い立ち・毛色・性格・呼吸と暑さ・皮膚・かかりやすい病気・迎え方までをまとめます。トイプードルのレオとシーズーのあんずと暮らしている立場からの実感もまじえました。
ハル
鼻ぺちゃさんには、息のしやすさがいちばん大事なんだね。
あんず
夏はハアハアしちゃうの、あんずも同じだもん!
レオ
だからフレンチブルドッグの話は、あんずにも当てはまるところが多いんだ。
タル吉
わしは急がぬから、息が上がることもないがのう。
ハル
あんずのためにも、暑さと呼吸の話はしっかり調べてきたよ。
フレンチブルドッグってどんな犬?パリの下町生まれの小さなモロシアン
原産国はフランスです。ジャパンケネルクラブ(JKC)の犬種標準によると、フレンチ・ブルドッグは1880年代にパリの下町で、熱心なブリーダーたちの交配から生まれました。はじめは市場の人夫や肉屋、御者に飼われていた犬で、その独特の姿と性格から、やがて上流社会や芸術家の世界にも広まっていったそうです。
日本では、JKCの2025年の犬籍登録頭数で9,578頭、第7位です。
体重はオス9〜14kgと、これまで調べてきた犬種のなかでいちばん重い部類です。小さくても筋肉質でがっしりした犬だと標準に書かれていました。
2023年の犬種標準|「普通に鼻で呼吸できること」

涼しい室内でゆっくり過ごすのが基本です。
国際畜犬連盟(FCI)の犬種標準は、2023年に改訂されています。そこには、鼻について次のように書かれていました。
- 鼻は黒く、広く、しし鼻で、鼻の穴は左右対称によく開いている
- 鼻の穴の傾きや上向きの鼻は、普通に鼻で呼吸できるものでなければならない
- 外貌と歩き方の全体の調和を損なうような誇張があってはならない
そして失格の項目には、「完全に閉じた鼻の穴」「呼吸困難」「難聴」が挙げられていました。
かわいさのために鼻を極端に短くしていくのではなく、健康に呼吸できることを前提にする——犬種標準がはっきりその方向を示している、ということだと思います。
毛色は、フォーン(淡い茶色)とブリンドル(虎のような縞模様)、そしてそれぞれに白い斑があるもの(パイド、フォーン・アンド・ホワイト)です。JKCの標準には、白一色の個体は難聴のリスクがあるため繁殖には適さないとも書かれていました。
いちばん気をつけたいのは暑さ|短頭種気道症候群と熱中症
フレンチブルドッグのように鼻の短い犬は短頭種と呼ばれます。湘南ルアナ動物病院(福永信幸院長)の解説では、フレンチブルドッグに多い病気の筆頭に短頭種気道症候群が挙げられていました。鼻の穴が狭い、のどの奥の軟口蓋が長いなど、空気の通り道が狭くなる状態がいくつか重なったものです。
アニコム損保の解説でも、フレンチ・ブルドッグは軟口蓋過長がほかの犬種より多いとされ、短い鼻のために呼吸がしづらく、体温調節が苦手なので暑さに弱いと説明されていました。
なぜ暑さに弱いのか
犬は人のように全身で汗をかけないので、主に口を開けた呼吸(パンティング)で体の熱を逃がします。ところが空気の通り道が狭い短頭種では、この呼吸がうまくいかず、熱がこもりやすいのです。夏の熱中症は、とくに注意が必要とされています。
家庭でできること
- 夏はエアコンで室温を管理し、留守中も切らない
- 散歩は早朝や夜の涼しい時間に。日中のアスファルトは避ける
- 興奮させすぎない、激しい運動をさせすぎない
- 首輪ではなくハーネスを使い、のどを圧迫しない
- 体重を増やしすぎない(のどまわりの脂肪は気道を狭くする)
🐾 暑さ対策と短毛の抜け毛に「ひんやりマット」と「グルーミング手袋」
室温管理の補助になるひんやりマットと、短毛の抜け毛取りの一例です。暑さ対策の基本はエアコンでの室温管理です。
① 暑さ対策に|大理石のひんやりマット
5,380円〜 税込
② 短毛の抜け毛に|mitas グルーミング手袋
640円 税込
いびきや「ブーブー」「ゼーゼー」という呼吸音がいつもしている、少し動いただけで苦しそう、といった様子があれば、動物病院で相談してみてください。呼吸が苦しそう、舌の色が紫っぽい、ぐったりしているときは、急いで受診が必要です。
あんず(シーズー)も短頭種の仲間なので、この話はわが家にもそのまま当てはまります。夏の暑さ対策は、フレンチブルドッグに限らず短頭種みんなの課題です。
ハル
夏の水遊びは、向いていない犬種です
暑さ対策というと、水遊びを思い浮かべる方もいると思います。ここはむしろ逆に気をつけたいところでした。
獣医師監修(ぐぅ動物病院・白神久輝院長)の犬とのおでかけ解説では、短頭種のフレンチ・ブルドッグやパグは、鼻や口から水が入りやすいため泳ぎには不向きな犬種とされていました。
鼻が短いぶん水面から顔を出していられる高さの余裕が小さく、そのうえ呼吸そのものがしづらい。涼ませるつもりの水遊びが、いちばん危ないことになりかねません。
水に入れるなら足がつく深さまでにして、目を離さないこと。深さのあるプールや海、川へ連れて行くならライフジャケットを着けることが、各所ですすめられています。
「暑いから水へ」ではなく、「暑いからエアコンの効いた部屋へ」。この犬種ではそちらが基本になります。
フレンチブルドッグの性格|社交的で遊び好き、でも独占欲も
JKCの犬種標準には、性格が「社交的、且つ、活発で、遊び好きで、独占欲が強く、鋭敏なコンパニオン・ドッグである」と書かれています。
アニコム損保の解説でも、社交的で遊び好き、子どもとも仲よくできる一方で、興奮しやすく、独占欲が強く、ほかの犬と張り合うこともあるとされ、子犬のうちからの社会化と基本的なしつけが大切だと書かれていました。「独占欲」という言葉が標準にわざわざ入っているのは、これまでの犬種にはなかった特徴です。
多頭飼いはどうか
人なつこく遊び好きなので、ほかの犬とも仲よくできる子は多いと考えられます。ただ、おもちゃやごはん、飼い主さんをめぐって張り合うこともあるとされるので、それぞれの食器・寝床・おもちゃを分けるのが基本になりそうです。
体重はレオやあんずより重く、力も強いので、体の小さな子と遊ぶときは勢いに気をつけたいところです。多頭飼いの様子はトイプードルとシーズーの多頭飼いで紹介しています。
しわと皮膚のお手入れ|短毛でも抜け毛は多い
FCIの犬種標準では、被毛は「短く、体に密着し、つやがあってやわらかい。下毛なし」とされています。トリミングは必要ありませんが、アニコム損保の解説では抜け毛が多いので、こまめなブラッシングが必要とされていました。
もうひとつ大事なのが皮膚です。湘南ルアナ動物病院の解説では、フレンチブルドッグに多い病気として皮膚炎が挙げられ、顔のしわが蒸れて菌が増えやすい環境になると説明されていました。
- 顔のしわの間を、やわらかい布でやさしくふいて乾かしておく
- 定期的なシャンプーで皮膚を清潔に保つ
- 赤み・かゆみ・脂っぽいにおいがあれば早めに相談する
短毛で下毛がない被毛は、マルチーズやパピヨンと同じ「シングルコート」の仲間です。それでも抜け毛は多いと言われるので、下毛がない=抜けない、ではないことがここでもわかりました。
そのほかフレンチブルドッグがかかりやすい病気
湘南ルアナ動物病院とアニコム損保の解説で挙げられていたものを整理しました。
家庭でできること
- 高いところからの飛び降りをさせない。床に滑り止めを敷く
- 目をこすっていないか、目やにや涙の量を見ておく
- 皮膚のしこりに気づいたら、早めに診てもらう
背骨の形|多くは無症状。でも「揺らぎやすい」
表の「背骨の形の異常」は、もう少し踏み込んで書いておきたい話でした。
動物病院セカンドセレクトの解説によると、フレンチブルドッグやパグには、背骨の一部がうまく形づくられない半椎(はんつい)という生まれつきの状態が多く見られるそうです。意外だったのは、基本的には無症状で終わるケースがほとんどとされていたこと。奇形と聞いて身構えましたが、それ自体が即、病気というわけではないようです。
ただし見過ごせない続きがあります。同じ解説では、椎骨どうしが安定しにくいため、椎間板の変性を起こしやすいと説明されていました。つまり背骨の形そのものより、そこから椎間板ヘルニアにつながりうることが本題です。
だからこそ、と紹介されていたのが健康診断でレントゲンを撮っておくという考え方でした。症状が出ていなくても、その子の背骨がどういう形なのかを先に知っておけば、段差やジャンプをどこまで許すかの判断が変わります。湘南ルアナ動物病院の解説でも、脊椎奇形は椎骨の癒合不全(半椎)として挙げられていました。
椎間板ヘルニア|あんずも同じ「軟骨異栄養性犬種」でした
背骨の話には続きがあります。ONEどうぶつ整形外科センターの解説によると、椎間板ヘルニアが起こりやすい軟骨異栄養性犬種として、ミニチュア・ダックスフンド、トイ・プードル、ビーグル、シーズー、ペキニーズ、パピヨン、フレンチ・ブルドッグなどが挙げられていました。
あんず(シーズー)も、レオ(トイプードル)も、この中に入っています。フレンチブルドッグを調べていて、いちばんわが家に刺さった一文でした。
同じ解説では、症状の進み方がグレードで分けられています。とくに覚えておきたいのがグレード2で、足先をこすったり、足首を返せないなど、明らかにいつもと違う歩き方になる段階だそうです。足の甲を引きずるようなこの歩き方は「ナックリング」と呼ばれます。
そして重いグレード4・5では、進行性脊髄軟化症が5〜10%で起こりうるとされていました。相川動物医療センターの解説によると、これは有効な治療法がなく、疑われてから2〜4日かけて進行し、ほぼすべての子が亡くなるという病気です。
だからこそ、家庭でできることははっきりしています。段差から飛び降りさせない、階段を自由に使わせない、滑る床に敷物をする。そして歩き方がおかしいと思ったら、様子を見ないで受診する。「明日でいいか」と思える病気ではありませんでした。
手術や麻酔が必要になったとき
これは病気そのものではなく、この犬種と暮らすうえで頭の隅に置いておきたいことです。
KINS WITH動物病院の解説によると、短頭種は鼻の穴が小さい・軟口蓋が長い・気管が細いといった生まれつきの構造から、全身麻酔で気道がさらに狭くなりやすいとされています。避妊去勢のような一般的な手術でも、短頭種であることが前提になります。
同じ解説では、完全に目を覚ますまで酸素を送るチューブを抜かない、抜いたあとも起きるまで見守る、といった術後の管理の必要性が強調されていました。
怖がらせたいのではありません。手術の相談をするときに「短頭種なので麻酔のことも教えてください」と一言聞ける——知っておく価値があるのは、その一言のためです。
ここに挙げたのはあくまで気づくためのきっかけで、診断ではありません。あてはまるところがあっても自己判断はせず、気になる様子があれば動物病院に相談してください。
フレンチブルドッグを迎えるときに知っておきたいこと
呼吸のしやすさを確認する
子犬を迎えるときは、静かにしているときの呼吸音を聞いてみるのがおすすめです。鼻の穴が極端に狭くないか、親犬に呼吸の問題がないかも、ブリーダーさんに聞いておくと安心です。犬種標準が「普通に鼻で呼吸できること」を求めているのと同じ目線です。
「8週齢」のルール
環境省が定める動物愛護管理法では、繁殖業者が生まれてから56日(8週齢)を過ぎない子犬を、販売のために引き渡したり展示したりすることは禁止されています(令和3年6月1日施行)。どの経路で迎えるにしても共通の決まりです。
子犬の多くは帝王切開で生まれてくる
調べていて、この犬種を迎える意味が少し変わって見えた話です。
かとう動物病院の解説によると、フレンチブルドッグなどの犬種は頭が大きく、自然分娩が難しいので帝王切開になるケースが多いとされています。
子犬の価格が高めなのも、繁殖に手術と獣医師の立ち会いが要ることと無関係ではないのだろうと思いました。迎える側としては、母犬にどれだけ負担をかけない繁殖をしているかを、価格の安さより先に見ておきたいところです。
迎え方の3つの道
子犬の価格は血統や毛色で幅がとても大きく、信頼できる形で「いくら」と書ける情報が見つかりませんでした。検討される際はご自身で最新の情報を確認してください。フレンチブルドッグの場合は、夏のエアコン代や、皮膚・呼吸のための通院費も見込んでおくと安心です。
レオ・あんずと比べて|10犬種を調べて見えてきたこと

背はあまり変わらなくても、体の厚みがまるで違います。
10犬種を調べてきて、フレンチブルドッグはあんずといちばん共通点が多い犬種だと感じました。どちらも鼻の短い短頭種だからです。
- 暑さに弱い…夏の散歩は早朝、室温管理は必須
- 呼吸の音に気をつける…いびきやブーブー音が増えていないか
- 目が大きく出ている…目のトラブルに気をつける
一方で違うのは被毛です。あんずは毛が伸び続けるのでトリミングが欠かせませんが、フレンチブルドッグは短毛でカットは不要。そのかわり顔のしわと皮膚のケアが毎日の仕事になります。
犬種の情報は、あくまで入口だと思っています。それでも傾向を知っておくと、迎えたあとの暮らしがぐっと想像しやすくなります。ほかの犬種はパグの性格と飼いやすさは?、ミニチュアシュナウザーの性格と飼いやすさは?、キャバリアの性格と飼いやすさは?、ポメラニアンの抜け毛は多い?にまとめました。
- あんず|シーズー・3歳。トリミングはわが家では2〜3か月おき(目安の1〜1.5か月より長めになりがち)→ トリミング頻度の記録
- レオ|トイプードル・16歳。体重は4kg程度。毎日ブラッシングして、月1回のトリミングは必須でした → レオとの出会い
- 寝方もちがいます。あんずは寝相が七変化、レオはくるんと丸まって寝ることがほとんど → 2匹の寝相くらべ
フレンチブルドッグについてよくある質問
フレンチブルドッグとボストンテリアの見分け方(耳・毛色・脚)は、フレンチブルドッグとボストンテリアの違いは?で表にまとめています。
パグ・フレンチブルドッグ・ブルドッグの違い(大きさ・耳・寿命)は、パグとフレンチブルドッグとブルドッグの違いは?で表にまとめています。
寿命はどのくらい?
アニコム損保の解説では、アニコム「家庭どうぶつ白書2023」をもとに11.2歳と紹介されていました。犬全体の平均(14.2歳)と比べると短めです。
トリミングは必要?
短毛なのでカットは必要ありません。そのかわり、抜け毛が多いのでこまめなブラッシングと、顔のしわのお手入れが必要です。
夏はエアコンをつけっぱなしにすべき?
暑さに弱い短頭種なので、夏場は留守中も含めて空調を切らない前提で考えたほうが安全です。散歩も早朝や夜の涼しい時間にします。
いびきをかくのは普通?
短頭種はいびきをかきやすいと言われますが、呼吸音がいつもうるさい、少しの運動で苦しそう、という場合は短頭種気道症候群のこともあります。気になるときは動物病院で相談してみてください。
ハル
あんず
夏はいっしょに、すずしいお部屋でごろごろしたいもん!
ハル
これで10犬種目。次はどの子のことを調べようかな。










コメント
[…] JKCの2025年の犬籍登録頭数では、ブルドッグは945頭で第30位でした。フレンチ・ブルドッグ(9,578頭・第7位)の10分の1ほどです。 […]
[…] フレンチブルドッグを調べたときも、2023年の標準改訂で呼吸の問題が重く扱われるようになっていました。短頭種の犬種標準は、今そういう流れの中にあるのだと思います。 […]
[…] ほかの数字も、犬種図鑑の各記事(フレンチ・ブルドッグ・ボストン・テリア)で調べたものです。 […]