国際畜犬連盟(FCI)の犬種標準を読んでみると、この犬は古代エジプトのファラオの宮廷にいた小さなサイトハウンドの子孫だと書かれていました。体高は32〜38cmあるのに、体重は最高5kg。背は高いのにとても軽い、というのがこの犬種の形です。
この記事では、FCIの犬種標準、ジャパンケネルクラブ(JKC)の登録数と毛色のルール、獣医師監修の解説や動物病院の情報をたどりながら、歴史・毛色・性格・寒さ対策・骨折・かかりやすい病気・迎え方までをまとめました。
ハル
ご先祖さまは、古代エジプトの王さまのそばにいたんだって。
あんず
脚がすらーっとしてて、走ったら速そうだもん!
レオ
ただ、骨が細くて骨折しやすいから、おうちの段差には気をつけたいんだって。
タル吉
わしの甲羅とは、ちょうど反対の作りじゃのう。
ハル
寒さと骨折のことは、とくにていねいに調べたよ。
イタリアン・グレーハウンドってどんな犬?古代エジプトから続く小さなサイトハウンド
FCIの犬種標準(第200号・2015年公表)には、イタグレの歴史がこう書かれています。古代エジプトのファラオの宮廷にすでにいた、小型のサイトハウンドの子孫。ギリシャを通り、紀元前5世紀の初めにイタリアへ渡り、ルネッサンス時代の貴族の宮廷でいちばん発展した、と。イタリアや外国の巨匠の絵に描かれていることも珍しくない、とも書かれていました。
サイトハウンドというのは、においではなく目(サイト)で獲物を見つけ、走って追いかける犬のこと。JKCでは第10グループ「視覚ハウンド」に分類されています。
FCIの標準では、イタグレは「小さいけれど、ミニチュアのサイトハウンドとしての特徴を完全にそなえた、洗練と優雅さのお手本」とされています。体高が32cm未満、または38cmを超える犬は失格、とまで決められていました。
アニコム損保の「犬との暮らし大百科」とヤマザキ動物看護大学の福山貴昭准教授が監修した解説によると、小型化が進んだことや第二次世界大戦の影響で一時は絶滅の危機にあったそうです。それを救ったのが、アメリカに渡っていたイタグレたちでした。
JKCの2025年の犬籍登録頭数では、イタリアン・グレーハウンドは3,234頭で第20位です。ミニチュア・ピンシャー(22位)を調べたとき、ミニピンの成り立ちにイタグレが関わったと紹介されていたのを思い出しました。
耳は「プロペラ耳」と呼ばれる
FCIの標準でおもしろかったのが耳の説明です。ふだんは折りたたんで、うなじのほうへ後ろに寝かせている。ところが何かに注意を向けると、耳の付け根が立ち上がり、先が横へ水平に張り出す。この形は「フライング・イヤー」や「プロペラ・イヤー」と呼ばれている、と書かれていました。

同じ子の耳が、気分でこんなに変わります。
イタグレの毛色|単色が基本で、白が入ってよいのは胸と足だけ
FCIの犬種標準で認められている毛色は、ブラック、グレー、イザベラ(淡い黄色がかったベージュ)の単色で、それぞれ濃淡は問いません。そして白が許されるのは胸と足だけ。色がいくつも混ざった毛や、胸と足以外の白は失格とされています。

右のように白が大きく入ると、標準の外になります。
2026年1月から、血統書に「×印」が付く毛色がある
JKCは「FCI犬種標準改正に基づき2026年1月よりスタンダード外となる毛色について」というお知らせを出しています。イタグレでは、次のような毛色が対象です。
- 「ホワイト&ブラック」「ホワイト&ブルー」「ホワイト&イザベラ」など、白が先にくる10の毛色:×印の対象
- 「ブラック&ホワイト」「グレー&ホワイト」「イザベラ&ホワイト」など13の毛色:白の部分が胸と足に入った白(ホワイト・マーキングス)であれば対象外。そうでなければ×印の対象
×印が付くのは2026年1月1日以降に登録された犬で、それより前に登録された犬が変更されることはない、とも書かれていました。×印はドッグショーの審査の基準にかかわる話で、家庭で一緒に暮らすぶんには何も変わりません。ただ、子犬を迎えるときに血統書の見方として知っておくと、説明を受けたときに話が早いと思います。同じお知らせにはトイプードルやミニチュアダックスの毛色も載っています。
イタグレの性格|陽気で愛情深く、そして繊細
FCIの犬種標準に書かれている性格は、たった3語でした。「陽気で、愛情豊かで、従順」(JKCの訳)。いっぽうで失格の項目には「攻撃的、または過度にシャイ」が挙げられています。
アイペット損保の鷺島祥子獣医師が監修した解説では、穏やかで優しく、子どもやほかのペットとも仲良くできる子が多いとされていました。ただ内気で繊細な一面もあり、ストレスをためてしまう子もいるそうです。アニコム損保の解説でも、家族には愛情深いいっぽうで、見知らぬ人には警戒心を強く抱く傾向があるとされていました。
しつけについては、福山准教授の監修した解説にはっきり書かれています。「繊細な性格の犬種なので、厳しいしつけは禁物」。乱暴な言葉や体罰は絶対に避け、穏やかに冷静に進めること。賢い犬なので覚えるのも早いでしょう、とのことでした。
性格には個体差があるので、あくまで一般にそう言われている、というお話です。
イタグレのお世話|寒さ対策・走る場所・幅の広い首輪
毛が短くて薄いから、寒さがとても苦手
鷺島獣医師監修の解説では、イタグレは毛が短くて薄いのでお手入れは簡単ですが、寒さはとても苦手とされ、冬は暖かい洋服を着せることがすすめられていました。アニコム損保の解説にも、イタグレの体つきに合わせた専門の洋服屋さんがたくさんある、と書かれています。
チワワやミニピンを調べたときも、小さくて毛の短い犬の寒さ対策が大事だと分かりました。イタグレは下毛のないシングルコートなので、冬の散歩と寝床の暖かさには、とくに気を配りたい犬種です。
走るのが大好き。だからリードはしっかり
福山准教授の監修した解説では、まとまった運動量を確保することが大切で、ドッグランのように全力で走れる場所で遊ばせることがすすめられていました。アニコム損保の解説では、ルアー(疑似餌)を追いかけて走る「ルアー・コーシング」というドッグスポーツも紹介されています。
ただし鷺島獣医師の解説には、動くものを見ると追いかけてしまう傾向があるので、散歩では飼い主がリードをしっかり持ってコントロールする必要がある、とも書かれていました。わが家のあんずのドッグランデビューはおっかなびっくりでしたが、イタグレにとってのドッグランは、もっと本気で走る場所になりそうです。
首輪は幅の広いものを
アニコム損保の解説では、イタグレは首がとても細いため、散歩で引っ張ると首に負担がかかるとされていました。引っ張らないしつけを徹底し、首輪は幅広のものがおすすめだそうです。気をつけたい病気として気管虚脱も挙げられていて、そこでも一般的なものより幅の太い首輪で負担を減らす、と書かれていました。
抜け毛は少なめ。ブラッシングは週に1〜2回
同じ解説によると、抜け毛は少ないものの、毛づやや血行、スキンシップのために週に1〜2回のブラッシングがすすめられていました。全身のカットは必要ありません。
🐾 細い首に「幅の広い首輪」、冬の散歩に「イタグレ用のフリースウェア」
首の細い犬のための幅広の首輪と、体つきに合わせた冬服の一例です(わが家の使用品の紹介ではありません)。首輪はサイズを測ってから選び、抜けないかを確かめてください。
運動量や寒さの感じ方には個体差があります。子犬やシニア、持病のある子は、かかりつけの先生に相談しながら決めてください。
イタグレは骨折が多い犬種|ソファ・抱っこ・フローリングに注意
イタグレを調べていて、いちばん多く出てきた言葉が「骨折」でした。
アニコム損保の獣医師監修の解説には、「家庭どうぶつ白書2018」のデータとして、小型犬の中でもイタリアン・グレーハウンド、次いでポメラニアンやトイ・プードルの骨折が多いと書かれています(2016年度に保険契約を開始した0〜12歳の犬507,375頭が対象)。骨折は1歳未満の子犬に多いそうです。
折れやすいのは前足の「橈尺骨(とうしゃっこつ)」
辻堂犬猫病院の解説によると、前足の手首から肘までの骨の骨折は、トイ犬種とイタリアン・グレーハウンドに多い傾向があり、2歳未満、とくに生後6〜11か月で起きやすいそうです。原因のほとんどは、次の2つでした。
- ソファや椅子からジャンプしたときの着地の失敗
- 抱っこ中の転落
着地するところが、フローリングなどの滑りやすい床であることが多い、とも書かれていました。成長期は骨がやわらかいこと、前足の骨の先のあたりは血流が少ないことも要因として挙げられています。
気づけるサインと、治療にかかる時間
同じ解説では、骨折すると突然キャンと鳴いて、痛めた足を完全に上げてしまうことがほとんどだとされていました。アニコム損保の解説によると、完治までは平均2〜3か月程度、診療費は「家庭どうぶつ白書2023」で平均209,530円。多くの場合は手術が必要になるそうです。
家の中でできる予防
レオの犬種であるトイプードルの記事でも、小型犬の足のけがを調べました。わが家でも、ソファからぴょんと飛び降りる姿にはひやっとします。イタグレの場合は、その「ひやっ」がそのまま骨折につながりやすい、と考えておいたほうがよさそうです。
イタグレがかかりやすい病気|膝・歯・目・皮膚
骨折のほかに、鷺島獣医師と福山准教授が監修した解説、アニコム損保の解説で挙げられていた病気を、家庭で気づけるサインと一緒にまとめました。
歯周病は、あごの骨にまで影響することがある
福山准教授の監修した解説では、歯周病がひどくなると下あごの骨の骨折を引き起こすこともあるとされていました。骨の細い犬種だけに、歯みがきは「口の中だけの話」ではなさそうです。
けいこくの森動物病院の歯科症例には、3歳のイタリアン・グレーハウンドが歯周病で前歯を抜くことになった例が紹介されていて、「若い子でも歯周病はよく見られる病気」と書かれていました。将来たくさんの歯を残すために、定期的な歯科検診がすすめられています。子犬のころから、口を触られることに慣らしておきたいです。
淡い毛色の子の「毛が薄くなる」変化
イデア動物病院の獣医師による解説では、カラー・ダイリューション脱毛症の好発犬種として、ドーベルマンなどと並んでイタリアン・グレーハウンドが挙げられていました。淡い色(ブルー、フォーン)の毛の部分だけが薄くなっていく遺伝性の病気で、毛の中の色素の入り方が不均一なために毛がもろく、折れてしまうそうです。生後6か月から3歳までに出ることが多く、いまのところ有効な治療法はないものの、毛に刺激を与えすぎないこと(過度なシャンプーやグルーミングを避ける)と、定期的なスキンケアがすすめられていました。
ここに挙げたのはあくまで気づくためのきっかけで、診断ではありません。あてはまるところがあっても自己判断はせず、気になる様子があれば動物病院に相談してください。
イタグレを迎えるときに知っておきたいこと
家の中を「骨折しにくい家」にしておく
迎える前にできる準備は、床と段差です。滑りやすい床にマットを敷く、ソファやベッドにステップを置く、抱っこは座ってする。子犬のうちほど骨折が多いので、来る前に整えておくのがよさそうです。
繊細さを知っておく
鷺島獣医師監修の解説には、はじめて犬と暮らす方は、ブリーダーに繊細すぎない子を紹介してもらうと一緒に生活しやすくなるかもしれない、と書かれていました。
「8週齢」のルール
環境省が定める動物愛護管理法では、繁殖業者が生まれてから56日(8週齢)を過ぎない子犬を、販売のために引き渡したり展示したりすることは禁止されています(令和3年6月1日施行)。
迎え方の3つの道
子犬の価格は、信頼できる形で「いくら」と書ける情報が見つかりませんでした。検討される際はご自身で最新の情報を確認してください。
同じく運動が大好きな犬種はジャックラッセルテリアの性格と飼いやすさは?で、寒さに弱い短毛の小型犬はミニチュアピンシャーの性格と飼いやすさは?で調べています。
イタグレについてよくある質問
寿命はどのくらい?
アニコム損保の2021年度のデータ(家庭どうぶつ白書2023)では、イタリアン・グレーハウンドの平均寿命は14.6歳でした。犬全体の平均(14.2歳)よりわずかに長い数字です。
抜け毛は多い?
下毛のないシングルコートで、抜け毛は少ないとされています。ブラッシングは週に1〜2回が目安です。
寒さには弱い?
毛が短くて薄いため、寒さはとても苦手とされています。冬は服や寝床の暖かさで調整してあげてください。
ミニチュア・ピンシャーとはどう違う?
見た目は似ていますが、FCIの分類ではイタグレは第10グループのサイトハウンド、ミニピンは第2グループの「ピンシャーとシュナウザー」です。イタグレは耳を後ろに寝かせ、ミニピンは耳がぴんと立っています。
トリミングは必要?
毛が短く、全身のカットは必要ありません。
あんず
でも、ソファからぴょんはダメなの、覚えておくね。
ハル
これで19犬種目。次はボストン・テリアを調べてみようかな。




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