「スピッツはよく吠える」というイメージを持っている方は多いと思います。わたしもそうでした。ところが国際畜犬連盟(FCI)の犬種標準を読むと、性格の項目に「騒がしいことは許されない」とはっきり書かれていて、欠点の一覧にも「騒がしさ」が入っていました。
この記事では、FCIの犬種標準、ジャパンケネルクラブ(JKC)の登録数、獣医師監修の解説をたどりながら、歴史・吠え声のイメージが変わった理由・白い被毛のお手入れ・性格・かかりやすい病気・迎え方までをまとめました。
ハル
名前のとおり、日本で生まれた白い犬なんだ。
あんず
でも、スピッツってよく吠えるって聞いたことあるの?
レオ
いまは改良されて、無駄吠えの少ない子が増えているんだって。
タル吉
わしも外の物音には、首を引っ込めたくなるものじゃ。
ハル
白い毛のお手入れと、暑さのことも調べたよ。
日本スピッツってどんな犬?白いジャーマン・スピッツから生まれた日本の犬
FCIの犬種標準(第262号)とJKCの犬種紹介によると、日本スピッツの起源は、1920年ごろにシベリア大陸と中国東北部を経由して日本に来た、大型の白いジャーマン・スピッツだと言われています。1921年ごろに東京の展覧会に初めて出陳され、1925年にはカナダから白いスピッツが2ペア輸入されました。1936年ごろまで、カナダ・アメリカ・オーストラリア・中国から輸入された犬で改良が続けられ、第二次世界大戦後の1948年に、JKCが統一の犬種標準を作ったそうです。
体重は標準では決められていません。アニコム損保の長根あかり獣医師が監修した解説では、オス7〜10kg、メス6〜9kgで小型犬に分類されていました。ドイツ語で「スピッツ」は「とがっている」という意味で、口先がとがって耳の立った犬を指すことばだそうです。
JKCの2025年の犬籍登録頭数では、日本スピッツは1,467頭で第28位でした。同じ解説によると、1950年代には大ブームになったこともある犬種です。
日本スピッツはよく吠える?イメージが変わった理由
FCIの犬種標準の性格の項目は、とても短い文でした。「賢く、陽気で、感覚が鋭い。騒がしいことは許されない」。欠点の一覧には、臆病さと並んで「騒がしさ」がはっきり挙げられています。
昔は「庭で吠える犬」だった
長根獣医師監修の解説には、イメージの理由が書かれていました。1950年代の大ブームのころは、犬は庭につないで飼うのが当たり前で、家の前を通る人に反応して激しく吠えるなどのマイナス面が見られ、一時は飼育頭数が大きく減ったそうです。現在は「吠えやすい」といった面が改良され、暮らしやすくなっているとのことでした。
バーニー動物病院の堂山有里獣医師が監修した解説(ワンクォール)でも、戦後は「キャンキャンとうるさく吠える犬」という印象が定着していたものの、その後の改良で、無駄吠えの少ない穏やかな犬が増えているとされていました。さらに、警戒心が強く吠えやすいこと、暑さに弱いことから室内で飼うことがすすめられ、室内で家族として暮らすことで穏やかな性格に育つとも書かれています。
「吠える犬」は、犬種のせいだけでなく、外につながれて知らない人の足音を聞き続ける暮らし方のせいもあったのかもしれません。とはいえ感覚の鋭さは今も健在なので、しつけは子犬のころから、と長根獣医師の解説にもありました。
日本スピッツの白い被毛|首まわりの飾り毛と、背負ったしっぽ
FCIの標準では、被毛はこう書かれています。上毛はまっすぐで、体から立ち上がる。下毛は短く、柔らかく、密。顔・耳・前足の前側・かかとから下は短い毛で、それ以外は豊かな長い毛。とくに首から肩、前胸は美しい飾り毛(フリル)に覆われ、しっぽにも長くたっぷりした飾り毛がある、とされていました。

顔と足先だけは毛が短いのも特徴です。
しっぽは「背中の上に背負う」のが決まりで、背中に乗っていないしっぽや、垂れた耳は失格とされていました。いっぽうで、強く巻きすぎたしっぽは欠点です。
白いもふもふ犬、3犬種の大きさの違い
堂山獣医師監修の解説では、よく似た白い犬として、サモエドとポメラニアンとの違いが紹介されていました。

同じ白いふわふわでも、大きさはこんなに違います。
日本スピッツの性格|明るく賢く、家族には深い愛情
長根獣医師監修の解説では、日本スピッツは明るく活発で、よく人を見ていて、しぐさや表情から気持ちを読み取ろうとする賢さを持っているとされていました。
堂山獣医師監修の解説では、性格がいくつかの言葉で紹介されていました。
- 明るい・好奇心旺盛:活発で聡明、遊び好き
- 愛情深い・忠実:愛想を振りまくタイプではないが、家族には深い愛着を示す
- 警戒心が強い:家族以外の見知らぬ人や犬には強い警戒心を抱く
初心者に向くかについては、警戒心が強いため多少難しいが、以前ほど飼いにくい犬種ではなくなっている、とされていました。運動欲求が比較的強いので、しっかり運動させる体力のある人、被毛のお手入れの時間をとれる人が向いているそうです。性格には個体差があるので、あくまで一般にそう言われている、というお話です。
日本スピッツのお世話|抜け毛・シャンプー・暑さ対策
換毛期の抜け毛はかなり多い
堂山獣医師監修の解説によると、日本スピッツは上毛と下毛の2層のダブルコートで、毛の量自体も多いので、春と秋の換毛期には抜け毛がかなり多くなるそうです。暖かくなる季節に下毛が抜け落ち、寒くなり始めると古い毛がごっそり抜けて新しい下毛に生え替わります。ポメラニアンやコーギーと同じタイプです。
シャンプーは月に2回程度。乾かすところまでが大事
同じ解説では、こまめなブラッシングと月に2回程度のシャンプーが必要とされていました。長く洗わなかったり、シャンプーのあとに地肌をよく乾かさなかったりすると、細菌が増えて皮膚炎やにおいの原因になるそうです。毛が多く、ていねいに洗うにはかなりの労力がいるので、トリミングサロンを使ってもよい、とも書かれていました。
長根獣医師の解説でも、白い毛は汚れや涙やけが目立ちやすいので、毎日のお手入れが欠かせないとされています。
寒さには強く、暑さに弱い
長根獣医師の解説では、ふわふわのダブルコートなので寒さには強く、暑さに弱いとされていました。暑い時期の散歩や運動では熱中症や肉球のやけどにも気をつけたいところです。
🐾 シャンプー後に「首かけのペット用ドライヤー」、換毛期の洗濯に「抜け毛を絡めとるランドリースポンジ」
毛量の多い犬のシャンプー後の乾かしと、服や毛布についた抜け毛対策の一例です(わが家の使用品の紹介ではありません)。ドライヤーは熱くなりすぎないよう、距離と温度に気をつけてください。
お手入れの頻度や運動量は個体差があります。子犬やシニア、持病のある子は、かかりつけの先生に相談しながら決めてください。
日本スピッツがかかりやすい病気|口・腎臓・目・膝
長根獣医師監修の解説では、アニコム損保の「家庭どうぶつ白書2022」をもとに、かかりやすい病気が挙げられていました。堂山獣医師監修の解説で挙げられていたものと合わせて、家庭で気づけるサインと一緒にまとめました。
「血が止まりにくい」病気も挙げられていた
堂山獣医師監修の解説では、血液に関わる病気も2つ挙げられていました。血友病は、血を固めるたんぱく質が遺伝的に作られない病気で、ささいなことで出血しやすく、出血すると止まりにくい。ほとんどの場合、発症するのはオスだそうです。免疫介在性血小板減少症は、皮膚や粘膜の紫色のあざ(紫斑)、鼻血、血便、血尿などが見られる病気とされていました。
ぶつけた覚えのないあざや、なかなか止まらない出血に気づいたら、早めに動物病院に相談したいです。
膝のお皿が外れる「膝蓋骨脱臼」
堂山獣医師監修の解説では、膝蓋骨脱臼は膝のお皿(膝蓋骨)が横にずれて外れてしまう状態で、生まれつきお皿のはまる溝が浅いものと、けがや生活習慣で外れやすくなるものがあり、小型犬で起きやすいとされていました。軽ければ保存療法、重ければ手術の対象になるそうです。
白い毛だから、涙のサインに気づきやすい
白い毛の犬は目の下の汚れや涙やけが目立つと長根獣医師の解説にありました。毎日顔をふいていると、目のまわりのいつもと違う汚れにも気づきやすくなります。目のまわりの変化が気になったら、早めに相談したいです。
ここに挙げたのはあくまで気づくためのきっかけで、診断ではありません。あてはまるところがあっても自己判断はせず、気になる様子があれば動物病院に相談してください。
日本スピッツを迎えるときに知っておきたいこと
室内で、家族のそばで暮らす
警戒心の強さと暑さへの弱さから、室内飼いがすすめられている犬種です。来客や外の物音に慣らす練習は、子犬のうちから始めておきたいところです。
「8週齢」のルール
環境省が定める動物愛護管理法では、繁殖業者が生まれてから56日(8週齢)を過ぎない子犬を、販売のために引き渡したり展示したりすることは禁止されています(令和3年6月1日施行)。
迎え方の3つの道
子犬の価格は時期やお店によって変わります。検討される際はご自身で最新の情報を確認してください。
同じく白いふわふわの小型犬はポメラニアンの抜け毛は多い?で、同じく白い毛の小型犬はマルチーズはシーズーとどう違う?でも調べています。
日本スピッツについてよくある質問
寿命はどのくらい?
アニコム損保の「家庭どうぶつ白書2022」によると、日本スピッツの平均寿命は13.3歳です(犬全体の平均は14.1歳)。
本当によく吠える?
昔は庭で飼われることが多く、吠える犬というイメージが定着しましたが、改良によって無駄吠えの少ない子が増えているとされています。FCIの標準でも「騒がしいことは許されない」と書かれています。
毛色は白だけ?
はい。犬種標準で毛色は「純白」と決められています。
抜け毛は多い?
ダブルコートで毛の量も多く、春と秋の換毛期にはかなり多く抜けます。
ポメラニアンとの違いは?
大きさがいちばん違います。日本スピッツは体高30〜38cm程度、ポメラニアンは約20cm。顔も、日本スピッツはマズルがとがってすっきり、ポメラニアンはマズルが短めです。
あんず
おうちの中で、いっしょにごろごろしたいね!
ハル
これで22犬種目。白いもふもふ仲間、次はサモエドも調べてみようかな。



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